現在、ロイヤルホスト再生の陣頭指揮をとる矢崎精二氏も、江頭氏の薫陶を受けたひとりだ。原価を上げて、クオリティの高い料理を提供する。食事を楽しむために全席禁煙を推進する。無理な新規出店を極力抑え、ドリンクバーや呼び鈴も減らす。これらはすべて江頭氏の掲げた「質」を取り戻すための施策であることは明らかだ。
つまり、「ロイホ24時間営業廃止」というのは、外食産業の最近トレンドという文脈で語られるようなものではなく、「江頭イズムの復活」とみるべきなのだ。
爆発的な人口増加と、右肩上がりの経済成長という恩恵を受けていた日本の経営者は、「とにかく拡大成長をしなくてはいけない」という脅迫観念がある。江頭氏と異なり「数」を追うことこそが経営になる。だから、実はメリットが多いという客観的事実を突きつけられても、「24時間営業」も止められないし、「完全禁煙」にも踏み切れない。
「お客様は神様です」みたいなフワッとした話がまん延する日本のサービス業の効率を上げるためには、いまこそ江頭氏の「サイエンスに基づいて質を高める」ということを見直すべきではないか。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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