「ロイホ24時間営業廃止」の正しい読み方スピン経済の歩き方(2/5 ページ)

» 2016年11月22日 08時47分 公開
[窪田順生ITmedia]

「営業時間短縮」はわずか1年足らずで方針転換

 オイルショックという大逆風を受けても死守した「深夜営業」をなぜここにきて大幅に減らしたのか。最大の理由は「社員の負担軽減」である。

 立地によってパートタイマーが集まらず、その分を店長ひとりがカバーするなど負担が大きくなり、従業員のモチベーションが下がるという問題が発生。そこでロイヤルとしては、昼・夕食時間の営業の焦点を絞る「選択と集中」という戦略を取り、これが見事に当たったのだ。当時の常務もこのように胸を張っている。

 「料理長、店長など主力スタッフがランチ・ディナーの稼ぎ時に集中して活動できるため、疲れはてて仕事をしていた以前より、売り上げは逆に上がる、予想外の好結果になった」(日経流通新聞 1990年8月16日)

 そう聞くと首をかしげる人もいるだろう。この勢いならば、3〜4年のうちには24時間営業は廃止されているはずではないのか。そうなっておらず、26年を経た現在でも24時間営業店が残っているということは、どこかでこの方針が暗礁に乗り上げたのではないか、と。

 そう、実はこの「営業時間短縮」はわずか1年足らずで方針転換を余儀なくされる。「バブル崩壊」による景気低迷のあおりを受け、減少した客数を取り戻すため、営業時間を延長する動きがファミレス業界で一気に広がったのだ。ロイヤルも例外ではない。

 『こうした状況をにらんで七、八月の二カ月間の期間限定で四十四店の営業時間を平均で二・三時間延長したところ、「半数の店で売上高が前年同月の水準を上回った」(北口誠専務)という。このため、同社では今後、営業時間を継続的に延長することを検討するという』(日経流通新聞 1992年8月27日)

 その後、ロイヤルは長い低迷期に入る。低価格メニューを実現するコンベア式オーブン、人的サービスを極力減らすドリンクバー、呼び鈴でという業界でいう「三種の神器」を導入するデフレ対策で遅れをとり、低価格路線を突き進むガストなどに水を開けられたのだ。「08年度には1店あたりの売上高は96年度の6割を切るまでに低下」(日経MJ 2014年8月8日)して、ロイヤルホスト事業撤退も検討されたという。

 復活の兆しが見えてきたのは2012年。11年に社長に就いた矢崎精二氏が新規出店という「規模の追求」と決別し、原価を上げて、他ファミレスと差別化できるような高品質な料理を提供するなど「本格的な洋食レストランへの回帰」を進めたことで、16年ぶりに前年同比プラスに転じ、翌年、翌々年とプラス成長が続いている。

 つまり、ロイヤルの「24時間営業廃止」というのは、こういう山あり谷ありの経営の中で26年越しで達成された悲願であり、「外食業界で深夜営業をやめたり短くしたりする動きが広がっている」(朝日新聞 2016年11月19日)みたいな最近ポッとでたような話ではないのだ。

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