アサヒ、海外で「スーパードライ」拡販狙う欧州ビールブランドを買収

» 2016年11月24日 19時55分 公開
[加納由希絵ITmedia]

 アサヒグループホールディングス(GHD)は、海外事業の成長に向けて取り組みを加速させる。10月、欧州のビールブランド4社を約2945億円で買収。欧州市場における事業基盤を確立し、主力ブランド「スーパードライ」の販売拡大につなげる。11月24日、都内で会見した小路明善社長は「海外事業が成長エンジンとなる」と語り、積極的な投資を続ける方針を示した。

photo アサヒGHDが取得した欧州ブランドのビール

 傘下に収めたのはイタリアの「ペローニ」やオランダの「グロールシュ」など、欧州で高いシェアを誇るプレミアムビールブランド。ベルギーのアンハイザー・ブッシュ(AB)・インベブから買収した。ペローニは50カ国以上、グロールシュは40カ国以上で販売されている。取得したブランド全体の2015年の年間販売量は約5500万ケースに上る。

 取得事業の16年3月期の売上高は約860億円。売上高営業利益率は約17%と、高収益を見込める。中期経営方針として示す稼ぐ力の強化に向けて、安定的な収益性を見込める欧州事業に経営資源を集中させる方針だ。

スーパードライのブランド強化へ

 欧州で認知度が高いブランドを展開することで、アサヒブランドの成長にもつなげる。現在、主力のスーパードライは日本食の専門店などで提供されるにとどまり、ブランド力の向上が喫緊の課題だ。

 買収に合わせて設立した現地法人のアサヒ・ヨーロッパで、アサヒブランドと欧州ブランドのシナジー創出に向けた取り組みを開始。欧州におけるアサヒブランドの認知度向上に向けて、スーパードライのマーケティングチームを新設する。

 また、18年にはイタリアとオランダの既存工場でスーパードライの製造を開始する。自社工場で全量生産する体制を構築し、安定した供給体制を整える。

 ロシアを除く欧州において、スーパードライの年間販売量は約100万ケース。そのうち、英国が約50万ケースを占める。イタリアは5万ケース、オランダは4000ケースにとどまっており、伸びしろがあると見ている。欧州では「現在の倍ぐらいの規模の販売を早期に実現」(小路社長)する方針だ。

 アサヒ・ヨーロッパのヘクター・ゴロサベル最高経営責任者(CEO)は「スーパードライは欧州市場で強力に打ち出せるブランド。まだ販売規模は小さいが、飲みやすさや味などでペローニなどの欧州ブランドと並ぶ」と期待を寄せた。

photo 欧州戦略を語ったアサヒGHDの小路明善社長(左)とアサヒ・ヨーロッパのヘクター・ゴロサベルCEO

積極投資で海外事業成長へ

 欧州事業を足掛かりに、海外事業の成長基盤確立を急ぐ。小路社長は「今回の欧州ビール事業取得後にも4000億円程度の投資が可能」と話す。具体的な投資先については言及を避けたが、積極的な投資を続ける方針を示した。投資先として、高い収益性が見込めること、プレミアムブランドを持っていること、買収によるシナジーが創出できることの3点を条件として挙げた。

 15年12月期の海外事業の売上高は2500億円で、売上高全体に占める比率は13%。欧州ブランドを合算すると16%まで高まるが、海外比率が約3割のキリンHDや4割近いサントリーHDと比べると国内頼みの事業構造となっている。小路社長は「海外事業を成長エンジンとするには、売上高比率を2〜3割まで引き上げることが必要」と語り、海外事業の成長に向けた意欲を示した。

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