企業活用取り込み急ぐ IT各社、「AI基盤」を続々開発日立、富士通、NTT

» 2016年12月06日 07時00分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 人工知能(AI)を企業などが利用しやすくする基盤構築をIT各社が競っている。技術を持たない企業がAIを活用したシステムを開発するための仕組みを提供するもので、拡大するAIのビジネス需要取り込みに向け、基盤作りを急いでいる。

日立グループが次々と施策を展開

 日立ソリューションズは12月1日、就業管理システムにAIを導入し、働き方の改善につなげるサービスを発表。「懇親会の回数」「女性社員の比率」などのデータと組織のパフォーマンスの相関関係をAIで分析し、生産性に影響する要因を抽出したり、全社員の就業データをAIで分析し、健康状態やストレスケアの必要性を算出できるという。提供は来年2月以降の予定。

photo 日立ソリューションズの新システムの概要
photo 新システムの画面イメージ

 また、日立製作所は10月に、企業が持つデータをAIを活用して分析し、顧客の購買単価や商品高倍率を高められる施策の立案につなげるサービスを発表している。核となる「Hitachi AI Technology/H」は「汎用AI」である点が特徴で、カブドットコム証券が信用取引のシステムに応用したり、従業員のよりよい働き方をアドバイスするシステムの開発など、さまざまな業界やシステムに対応できる。

photo 「H」を活用したサービスの概要

富士通は「Zinrai」のAPIを提供

 富士通が11月末に発表したのは、同社のAI関連技術をまとめた「Zinrai」を企業が活用するためのサービス。画像処理・音声処理・自然言語処理などのAI技術をAPIとして提供し、企業がAIを活用したシステムを構築しやすくする。

 今後、通信端末やロボット、自動車などでも活用できるプラットフォーム化を進める。富士通は2020年度末までに、AI関連ビジネスで累計3200億円の売り上げを見込む。

photo 「Zinrai」の概要
photo 「Zinrai」の導入が予定される業界

NTTグループは「corevo」

 NTTグループは5月に、ロボットやセンサーと連携してデータを処理するAI基盤「corevo」を発表した。

photo 「corevo」の仕組み。4種類の異なるAIから構成されている。

 corevoの音声認識技術を他社向けのサービスとして提供するほか、NTTグループ各社が分担して高齢者支援・地域振興・交通機関の渋滞予測などの分野で実証実験を進めてきた。11月末からはNTT西日本が、観光業へのAI導入に向けた新たな実証実験を開始。corevoを実装した対話型ロボットが訪日外国人から観光のニーズを聞き出し、最適な観光地をデジタルサイネージに表示するもので、結果次第では商用化を検討するという。

photo 実証実験の分担
photo NTT西日本による実証実験の詳細

Intelも注力

 米Intelも11月に「Intel Nervana Platform」と呼ぶAIプラットフォームを発表。2017年にも高速なディープラーニング(深層学習)が行えるプロセッサを投入する計画を明らかにした。今後は米Googleと提携し、さらにAI分野に注力するという。

 調査会社のTracticaによると、企業向けAIシステム市場は15年の約2億ドルから2024年には111億ドルに拡大する見通し。IT各社は、企業のAI導入がIT投資の拡大につながる好機とみて、使いやすく高性能なAI基盤を整備して需要取り込みに力を入れている。

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