――今後、あきこちゃんはどのように進化していくのでしょうか?
白石: 対話の中での情報だけなく、例えば過去に購入した商品データ(POSデータ)、ポイントカードなどと連携することで、ユーザー1人1人の属性、嗜好に合った商品を紹介できるようになるでしょう。マーケティング面でチャットボットはスゴい可能性を秘めていると考えています。チャットボットがユーザーとのメインのコミュニケーションチャネルになっていくのは間違いありません。
――確かに米国では、チャットボットが次世代のユーザーインタフェースになるという認識が既に広がっています。とはいえ、一般的な話としてチャットボットは、まだまだ対話のやりとりで不自然な部分がありますよね。
高木: はい。チャットのやりとりって完璧な日本語じゃないんです。完璧な日本語に対してならチャットボットはほぼ完璧な受け答えができます。しかし、チャットのやりとりの中では『てにをは』が省略されていたり、絵文字が入ってくるので難しい。
こうした表記の「ゆれ」を理解する自然言語処理の手法を日本マイクロソフトさんと一緒に研究開発しており、あきこちゃんのアルゴリズムは同社が提供する「りんなプラットフォーム」を採用しています。あきこちゃんは今後ますます賢くなっていき、人間と変わらない対話ができるようになっていくでしょう。
――チャットボット以外では、どんなところでAIを活用しようと考えていますか?
白石: われわれにとって需要予測は非常に大事なテーマです。うまく予測できれば廃棄ロスが減ります。しかし、廃棄ロスを気にし過ぎると、今度は機会ロスになる。廃棄ロスと機会ロスの最適なバランスを取ることが求められています。そこで、(POSなどの)大量のデータをディープラーニング(深層学習)で分析することで、より正確な需要予測を実現しようと実験中です。
高木: また、AI搭載のカメラでユーザーの動きを把握し、何人がどのように店内を動き、何を手に持って、何を買ったかという情報分析も一部の店舗で実験的に行っています。
――ロボットやドローンを使って無人店舗を作ったりすることも考えていますか?
白石: 倉庫や流通経路でロボットが使えないかという研究は続けています。ただ店舗に関しては、無人店舗を目指しているわけではありません。われわれは大きな自動販売機を作りたいわけではなく、接客を含むコンシェルジュ的なサービス業を目指しているので。
――過疎地でも無人店舗を出展する計画はないのですか?
白石: 過疎地での無人店舗の可能性は否定しません。既に1部の過疎地では移動販売車などのサービスを始めていますし、ドローンによる宅配も検討しています。
――なるほど。本日はありがとうございました
湯川鶴章(ゆかわ・つるあき)
ITジャーナリスト。時事通信編集委員を経て独立し、ブログメディアTechWaveを立ち上げたあとフリーに。「少人数勉強会TheWave湯川塾」ビジネスマンのためのAI講座湯川鶴章オンラインサロンなどのセミナーも運営する。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング