2017年の宇宙ビジネス、ここを要チェック!宇宙ビジネスの新潮流(3/3 ページ)

» 2017年01月21日 08時30分 公開
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日本(1):宇宙ベンチャーは商業化に向けた第一歩

 過去2年で総額80億円ほどを資金調達してきた宇宙ベンチャー企業が、2017年は商業化に向けた大きな一歩を踏み出す。衛星ベンチャーのアクセルスペースは将来的に小型衛星50基の打ち上げを計画しているが、その第一世代として今年3機の衛星打ち上げを計画している。また、宇宙資源開発を目指すispaceが運営するチームHAKUTOが参戦している月面無人探査レース「Google Lunar XPRIZE」の期限が今年末に迫っている。多くの取り組みが成功することを期待したい。

鳥取砂丘でフィールド試験したHAKUTOのローバー(写真:HAKUTO) 鳥取砂丘でフィールド試験したHAKUTOのローバー(写真:HAKUTO

日本(2):異業種企業が宇宙ビジネスに踏み込むか

 2016年は異業種企業による宇宙ビジネスへの参画が加速した。通信企業、自動車メーカー、エアライン、商社など、多数の企業が宇宙関連企業をスポンサー、業務提携してきている。他方で、こうした大手異業種企業が本格的な宇宙ビジネスに踏み出すかは今後の焦点だ。昨年末にソフトバンクが発表した衛星インターネットベンチャー米OneWebへの1000億円投資のように、ヒト・モノ・カネが動き出すと、宇宙産業拡大の流れにつながっていくだろう。

日本(3):H3ロケットや準天頂衛星の国プロも山場

 他方で政府主導の大規模プロジェクトにとっても2017年度は重要だ。日本版GPSとも言われる準天頂衛星は、昨年までに初号機が打ち上がっており、今年度追加3機の打ち上げを計画。新型基幹ロケットのH3も2017年度は開発の山場であり、キーとなる技術やエンジンの実証実験が行われる。測位衛星システムや基幹ロケット開発は米国、欧州、中国なども進めており、日本の取り組みに期待したい。

日本(4):宇宙産業ビジョンの策定

 政策面では、昨年11月に宇宙二法が成立したことは記憶に新しい。2017年の注目は「宇宙産業ビジョン」だ。現在、筆者も委員として参加している内閣府 宇宙産業振興小委員会で議論が重ねられている。法律による制度的担保は重要だが、政策的支援も重要だ。政府では「海外展開タスクフォース」「S-NET」など複数の産業支援策が行われているが、先行する米国などでは過去10年にわたりさまざまな政策が打たれてきている。今後の日本の宇宙政策に注目が集まる。

 最後に、少しだけ宣伝をさせていただきたい。筆者が主催する宇宙ビジネスカンファレンス「SPACETIDE2017」が2月28日に開催される。手前味噌だが、2017年の宇宙ビジネスを見通す上で絶好の機会と言えるだろう。

 2回目となる今回は、ベンチャー、大手企業、異業種企業、政府関係者、欧米有識者など総勢20人以上が登壇。数百人の方々が来場する予定だ。宇宙ビジネスの熱気を肌で感じるまたとない機会であり、ご興味ある方はWebサイトより事前登録してご参加いただきたい。読者の皆さんとも会場でお会いできれば幸いである。

著者プロフィール

石田 真康(MASAYASU ISHIDA)

A.T. カーニー株式会社 プリンシパル

ハイテク業界、自動車業界、宇宙業界などを中心に、10年超のコンサルティング経験。東京大学工学部卒。内閣府 宇宙民生利用部会および宇宙産業振興小委員会 委員。民間宇宙ビジネスカンファレンスを主催する一般社団法人SPACETIDE代表理事。日本発の民間月面無人探査を目指すチーム「HAKUTO(ハクト)」のプロボノメンバー。主要メディアへの執筆のほか、講演・セミナー多数。

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