熊本観光にビッグデータ活用 震災からの復興目指す観光客呼び戻しへデータ活用

» 2017年02月07日 18時13分 公開
[濱口翔太郎ITmedia]

 目的地型観光振興会社(DMC)のくまもとDMC(熊本市)は2月7日、熊本県への観光客誘致にビッグデータ分析を活用すると発表した。熊本を訪れる観光客の共通点などを定量的に把握し、サービスの向上につなげる。2016年に発生した熊本地震の影響で、年間観光客は従来平均の約60万人から約48万人に落ち込んでおり、20年までに本来の水準まで戻す狙いだ。

photo 熊本県のマスコット「くまモン」と村田社長

 DMCは、ターゲットとする顧客層と地域のコンセプトを設定した上でさまざまな企業と連携し、データ分析などを取り入れた先進的な取り組みを進める観光事業者。地方創生の一環として観光庁などが支援している。

photo 観光庁による説明(説明内の「DMO」とは、先進的な取り組みを進める観光関係組織全体、「DMC」は企業)

 くまもとDMCは、熊本地震からの復興を目的に、16年12月に設立。国内の女性、カップル、富裕層のシニア世代に加え、アジア系の訪日外国人をターゲットに設定し、熊本県産の食材を楽しむことがテーマの旅行企画の販売や特産品のEC事業などを始めたばかりだ。

photo くまもとDMCの公式ホームページ

 ビッグデータ分析を通じ、「自然が豊かな場所を検索している人は熊本を訪れる傾向が強い」といった国内観光客の特徴や、熊本産の商品をよく購入する人の共通点、訪日外国人の観光地のリアルタイムでの移動経路、ヒット商品とそうでない商品の違いなどを分析。人々の興味を喚起するポイントを突き止め、新たな旅行プランの立案や、特産品などの商品開発、インバウンド受け入れ環境の整備などに応用する。

 ビッグデータ分析を導入する目的について、同社の村田信一社長は「地域観光経営にマーケティングの手法を取り入れ、熊本を集客力のある観光地に戻すことが目標。複数のビッグデータを統計的手法によって分析し、結果を踏まえてより良いサービスの考案につなげていきたい」と話す。

 データ分析を開始するに当たり、経路探索サービスのナビタイムジャパンや、位置情報を活用したアプリ開発を手掛けるAgoopなど4社と提携。目的地検索データ、インバウンドGPSデータ、流動人口データ、飲食店の顧客POSデータなどの提供を受ける。各種データは、日本マイクロソフトのクラウドプラットフォーム「Azure」上に集積し、観光振興に特化したデータベースを構築する。

photo 各社の分担とデータベース活用イメージ

 分析では、データ分析会社のデータビークルが開発したデータ変換ツール「Data Ferry(データフェリー)」とデータ分析ツール「Data Diver(データダイバー)」を使用。両ソフトは、プログラムを書く必要がなく、非専門家でも精度の高いデータの区分と統計的分析を行える点が特徴。データサイエンティストを雇用せず、現場で働く当事者が活用することで、コストの削減と業務の効率化をはかる考えだ。

ALTALT 分析ソフトの概要

 同社取締役の外山由惠氏は「ノウハウを蓄積した後、他のDMOや地方自治体のデータ分析を支援するコンサルティング事業や調査の受託も始めたい」と話している。

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