トランプリスクが鍵 車各社、北米好調続くか販売は伸びているが…(2/2 ページ)

» 2017年02月13日 07時30分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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政策の動向を注視

 1月に就任した米国のトランプ大統領は、米国で自動車を販売する国内外のメーカーなどに対して、国内投資や雇用を呼び掛けている。生産拠点の増設が進むメキシコからの輸入品に高い関税をかける意向を示すなど、北米で収益を上げる日系メーカーの業績に影響を与える可能性がある。

 米国の通商政策による影響について、トヨタの大竹常務役員は「現時点で影響を見通すことは難しい。引き続き動向を見守りたい」と述べた。富士重の高橋取締役専務執行役員も「販売面の影響はまだ分からない」、マツダの丸本副社長も「情報を確実に収集し、業界に与える影響を注視している」と繰り返した。

 日産の田川丈二常務執行役員は「各国の規制、基準に対応してビジネスを進めてきた。それが変わるなら対応する」と、政策に対応していく姿勢を示した。メキシコで稼働予定の工場については、計画の変更はないという。

現地生産、貢献を強調

 米国における生産体制については、引き続き拡充していく方針を示す発言が目立った。米国を主要生産拠点とするホンダの倉石副社長は「現地で車を作って売ることがポリシー」と強調。米国では開発も現地主導で進めていることや、現地生産比率が7割に上ることにも触れた。メキシコでの生産については、「メキシコから米国への輸出量は多くないが、本当に高い関税がかけられたら何らかの対応をせざるを得ない」と話した。

photo 富士重工業は2016年11月、米国工場で「インプレッサ」の生産を開始(出典:富士重工業)

 富士重の高橋取締役専務執行役員は、米国での販売台数に対して現地生産比率が高くない現状を認めた上で、16年に米国の生産能力を倍増したことを強調。「大きく現地生産比率が高まった。今後も工場の生産能力を上げていく」と語った。また、生産の拡大によって「雇用に少なからず貢献できている」と言及。生産能力増強で1300人を新たに雇用したことや、現地のサプライヤーによる雇用創出効果に触れた。

 今後5年で1兆円を米国に投資する方針を発表しているトヨタは、その方針に沿った生産対応を進めることをあらためて示した。大竹常務役員は「米国では60年近く地域に根差して貢献してきた。どこの国でもその町一番の会社になることを目指している。今後も良き企業市民として貢献したいという思いで取り組んでいく」と力を込めた。

 北米生産からは撤退している三菱自動車の池谷光司副社長も「現状の米国販売は年間10万台程度と少ないが、避けて通れない重要なマーケット。施策をにらみながら、戦略を考えたい」と言及した。

 17年3月期の業績見通しは、期初の円高傾向によって利益が目減りしたことで減益予想が目立つ。一方、足元の為替は円安に推移しており、大手7社のうち4社が最終損益の予想を上方修正した。米国新政権の政策とともに、為替や経済状況の変化についても不透明感がさらに強まっている。政策の動向によっては、現地生産のさらなる拡大や投資計画の変更などを迫られる可能性もあり、かじ取りの難しさが増していきそうだ。

photo 日産自動車の決算会見
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