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» 2017年03月27日 07時25分 公開

弱点を克服し、利用者に恩恵:東武鉄道は「つながり」を大切にしている会社だ、と思える事例 (3/3)

[小林拓矢,ITmedia]
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いまに生きる根津嘉一郎の精神

浅草駅には百貨店の松屋が出店している

 東武の礎を築いた初代根津嘉一郎は、阪急電鉄の小林一三や東京地下鉄道の早川徳次と並ぶ、山梨県出身の鉄道経営者として知られている。根津は、多くの鉄道会社の経営に関わり、「鉄道王」と呼ばれた。主なものを挙げても、東京地下鉄道や南海鉄道などがある。南朝鮮鉄道の経営にも参加していた。

 一方で、根津は「社会から得た利益は社会に還元する義務がある」というポリシーを持っていた。そのために、教育に力を入れていた。旧制の武蔵高等学校を造ったのも、根津である。この学校は、現在の武蔵中学校・高等学校、武蔵大学へと発展している。

 これらの学校は、東武沿線ではなく、武蔵野鉄道(現在の西武池袋線)沿線につくられた。根津は武蔵野鉄道の株式を持っていたのかもしれないが、自社の沿線ではなく他社の沿線に造ったことはいまから考えると意外である。武蔵中学校・高等学校は独自の教育方針で知られ、多くの難関大学合格者を輩出している。その卒業生は、さまざまな世界で活躍している。

 また、ふるさと山梨県の学校にも寄付を行った。山梨市の万力公園には、根津嘉一郎の銅像がある。根津は、郷土の偉人でもあるのだ。

 根津嘉一郎が作り出したネットワーク型の思考が、いまの東武にも生き、多くの利用者がその恩恵を受けている。

 囲い込むだけがビジネスではない。多くの人と手をたずさえて、事業を成し遂げることがいまの時代にも求められている。その意味で、狭い範囲内でものを考えがちな私たちが、東武に学ぶことは多いのではないだろうか。

著者プロフィール:小林拓矢(こばやし・たくや)

 1979年山梨県甲府市生まれ。早稲田大学卒。フリーライター。大学時代は鉄道研究会に在籍。鉄道・時事その他について執筆。単著『早大を出た僕が入った3つの企業は、すべてブラックでした』(講談社)、共著に首都圏鉄道路線研究会『沿線格差 首都圏鉄道路線の知られざる通信簿』(SB新書)、ニッポン鉄道旅行研究会『週末鉄道旅行』(宝島社新書)。


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