このニュースはもともと、2016年8月に、米インディアナポリス・スター紙による調査記事のキャンペーンが繰り広げられたことで明らかにされた。同紙は、過去20年にわたって、コーチやジムのオーナー、また体育館などで働く人たちの手によって、少なくとも368人の体操選手たちが性的虐待を受けていたようだ、と報じた。
例えば、12歳の体操選手が五輪コーチから「治療」の間に性的にいたずらされたり、コーチが少女のレオタードの中に指を入れたり、6歳の子どもがコーチに裸の写真を撮られたり、というケースもあった。米国内屈指の権威あるジムでは、コーチがほぼ毎日、14歳とセックスをしていたとも暴露された。
こうした事態の深刻さに、米議会が動き法規制に乗り出した。議員らが報告の義務や処罰の厳格化などを目指して法案を提出し、議会では被害者である元選手たちが証言台に立ったのだった。
新体操の米国代表メンバーだったジャネット・アントリンも、ナサールから性的虐待を受けていた1人だが、彼女がメディアに語った発言は印象深い。この発言がすべてを物語っているかもしれない。
「自分が成功できるかどうかの決定を下す人たちの前では、誰も出過ぎたことはしたくない。だから逆らわないで言われた通りに応じてしまう」
これこそ、多くの子どもの心情なのかもしれない。つまりコーチやドクターなど大人の前では反抗はできないということだ。そう考えると、米英だろうが日本だろうが、スポーツに限らずこういう状況は起こりうる。教師や保護者会会長の前では言いなりになってしまうのも分からなくはない。
ちなみに欧米では近年、子どもたちが集まる教会や学校、それ以外のスポーツや課外活動で、子どもに対する性的虐待事件がしょっちゅう取り沙汰されており、社会問題のひとつになっていると言ってもいい。その背景に、アントリンの言うことと同じような理由があるのかもしれない。
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