ぺんてるのサインペン “書きやすさ”の理由ロングセラー商品(3/3 ページ)

» 2017年04月24日 08時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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「筆記感」を追求

 近年になっても、大幅な改良を実施している。発売から50周年の2013年、ペン内部の中綿を改良。使い始めから終わりまで、かすれずに同じ太さで書けるペンを目指した。従来の中綿は、繊維の隙間の大きさがまちまちで、そこを通るインクの量にもわずかな差が生まれ、ペン先からの吐出量が安定しない要因になっていた。そこで、インクが通る隙間の大きさを均一に近づけることで、常に安定してインクが出るようにした。綿の密度とのりの量のバランスを微調整することで実現した細かい改良だが、“筆記感”は違ってくる。

 日々使われる筆記具は、ほんの少しの違いが使い心地を大きく変える。それが分かっているからこそ、改良を重ねて品質を安定させることを徹底してきた。その精神が今も受け継がれている。

 近年はサインペンのバリエーションも広げている。カラーペンとしての用途も見込み、13年に桃色や空色など新色4種類を追加。全8色のセット商品も定番化した。また、手軽に筆文字が書ける「筆文字サインペン」や、筆のようなタッチで書けるカラーペン「筆タッチサインペン」、水に強い顔料のインクを使用した「はがきサインペン」など、用途の広がりに応じて派生商品を展開している。

photo サインペンは8色を展開。定番の黒や赤のほか、桃色や空色などもある
photo 手前から「筆タッチサインペン」「筆文字サインペン」「はがきサインペン」

 今後は、用途や使われる場面をより強く意識していくことが課題だという。ロングセラー商品のサインペンでも、「どんな人が何に使っているのか、意外と認識できていない」と内村さんは話す。作家やデザイナーなどのクリエイターが仕事で使用したり、参加型のワークショップで使われたりと、サインペンを使う場面はなんとなく思い浮かぶが、具体的な使い方や最近の動向をもっと把握する必要があるという。

 そうすれば、“書く場面”を増やすための取り組みにもつながる。例えば、これまでに期間限定で3回実施した、店内の壁などに落書きができるカフェ「GINZA RAKUGAKI Cafe & Bar by Pentel」もその一環。ぺんてるの文具を楽しく使うシチュエーションを提供している。「使う場面を具体的にイメージして、どうすれば喜ばれるのかを考えていく」(内村さん)。

 世界初の“モノ”としてサインペンを広めたぺんてるは、“コト”提案にも力を入れていく。「書く」喜びを生み出すための挑戦は続く。

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