大学発ベンチャー、業績順調 母体は「東大」が最多業歴浅い企業は苦戦

» 2017年05月01日 11時48分 公開
[ITmedia]

 大学の研究成果や特許を基にしたビジネスを展開する「大学発ベンチャー」の業績が伸びている――帝国データバンクの調査でこうした結果が出た。2008年のリーマンショックの影響で近年は伸び悩んでいたものの、15年の売上高合計は07年以来で最高の約1847億9300万円を記録。リーマンショック前の水準にまで回復していた。

photo 大学発ベンチャーの売上高動向

 15年の損益動向は、全体の58.4%が黒字。業歴別では、設立15年以上の企業は60%超が黒字を計上しており、業歴が長い企業が特に安定している傾向がうかがえた。

photo 2015年の損益状況

 母体となる大学は、東京大学が93社で最多。以下、東北大学(43社)、大阪大学(42社)、京都大学(38社)――と続いた。都道府県別では、大学発ベンチャーは東京都に最も多く、全体の27.5%に相当する236社が集中していた。

photo 全国の主要な大学発ベンチャー

 東大発のベンチャー企業には、微生物のミドリムシを使用したサプリメントの開発・販売を手掛けるユーグレナ(東京都港区)などが存在。同社は16年度の連結売上高が前年度比約2倍の111億円に上るなど順調だ。

photo ユーグレナの連結売上高=同社Webサイトより

 しかし、設立直後の企業は、赤字に陥るケースがみられる。LED照明の開発・生産を手掛けていた10年9月設立の山口光研究所(山口県山陽小野田市)は、安価な海外製品との競合で苦戦し、想定した売り上げを確保できず、16年4月に破産に至った。

 帝国データバンクは「設立直後の企業では、研究費・開発費などの投資が先行するため、事業が安定するまでは収益性が低調になりやすい。新市場を開拓する“強い大学発ベンチャー”を生み出すためには、地方自治体など行政側の多様な支援策が求められる」と分析している。

 調査は、17年4月の時点で帝国データバンクのデータベース「Cosmos2」に登録している大学発ベンチャーなど計858社を対象に実施した。

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