大学の研究成果や特許を基にしたビジネスを展開する「大学発ベンチャー」の業績が伸びている――帝国データバンクの調査でこうした結果が出た。2008年のリーマンショックの影響で近年は伸び悩んでいたものの、15年の売上高合計は07年以来で最高の約1847億9300万円を記録。リーマンショック前の水準にまで回復していた。
15年の損益動向は、全体の58.4%が黒字。業歴別では、設立15年以上の企業は60%超が黒字を計上しており、業歴が長い企業が特に安定している傾向がうかがえた。
母体となる大学は、東京大学が93社で最多。以下、東北大学(43社)、大阪大学(42社)、京都大学(38社)――と続いた。都道府県別では、大学発ベンチャーは東京都に最も多く、全体の27.5%に相当する236社が集中していた。
東大発のベンチャー企業には、微生物のミドリムシを使用したサプリメントの開発・販売を手掛けるユーグレナ(東京都港区)などが存在。同社は16年度の連結売上高が前年度比約2倍の111億円に上るなど順調だ。
しかし、設立直後の企業は、赤字に陥るケースがみられる。LED照明の開発・生産を手掛けていた10年9月設立の山口光研究所(山口県山陽小野田市)は、安価な海外製品との競合で苦戦し、想定した売り上げを確保できず、16年4月に破産に至った。
帝国データバンクは「設立直後の企業では、研究費・開発費などの投資が先行するため、事業が安定するまでは収益性が低調になりやすい。新市場を開拓する“強い大学発ベンチャー”を生み出すためには、地方自治体など行政側の多様な支援策が求められる」と分析している。
調査は、17年4月の時点で帝国データバンクのデータベース「Cosmos2」に登録している大学発ベンチャーなど計858社を対象に実施した。
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