Googleが広告ブロックを検討? その理由とは“いま”が分かるビジネス塾(2/3 ページ)

» 2017年05月11日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]

広告単価を上昇させるメリットに?

 Googleが自らの首を絞めてでも、迷惑な広告の排除に動いているのは、従来型の広告モデルの限界を誰よりも理解しているからである。同社は2016年度には約902億ドル(約9兆9000億円)を売り上げているが、このうち広告が占める割合は9割近くに達する。Googleのビジネスはほとんどが広告に依存しているといっても過言ではない。

 Googleの売上高は単純に考えれば、広告単価と(広告への)クリック数をかけることで計算できる。広告単価が高ければ高いほど、クリック数が多ければ多いほど、同社の収益は拡大する。

 ところがGoogleが取り扱う広告の単価は下落が続いている。今後もスマホの普及でネットが生活インフラとしてさらに拡大するとともに、ネット広告がコモディティー化し、単価は下がっていくとみられている。

 2010年を基準にすると広告のクリック単価は既に6割まで下落している。一方、ネット利用範囲の拡大に伴ってクリック数は順調に伸びており、同じ期間で約4.5倍に拡大した。クリック数が4.5倍になり、単価が6割になったのでGoogleの広告売上高は理論上は2.7倍に増えた計算だ。単価が安くなっても、クリック数の増加がこれを補うという図式であり、実際、同社の広告関連の売上高は6年間で約3倍に拡大しており、理論値とほぼ一致している。

 ネット利用者数や利用頻度の増加が広告単価の下落を上回っている限り、Googleは成長を続けられるが、いつかはそれにも限界がやってくるだろう。クリック数の伸びだけに依存してきたモデルを見直さなければ、次の10年の成長シナリオを描くことは難しい。

 Googleの広告ブロックは、短期的には収益にマイナスかもしれないが、ユーザーの信頼感を高め、これが広告単価の上昇につながってくれれば長期的メリットになるというのがGoogleの見立てである。

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