販売好調! 花月嵐の家系ラーメン「藤崎家」とは長浜淳之介のトレンドアンテナ(2/3 ページ)

» 2017年05月16日 06時00分 公開
[長浜淳之介ITmedia]

“藤崎流”家系ラーメン

 藤崎氏は、延べ150作にも上る期間限定ラーメンのほぼ全てを作ったと言っても過言ではないほどのラーメンマエストロだ。その藤崎氏をもってしても、横浜家系ラーメンは難しい料理で、完成形まで試行錯誤に10年以上の歳月を費やしたという。

 家系ラーメンは、濃厚なとんこつしょうゆスープ、チーユ(鶏油)、スープに負けない太めんのバランスが重要。濃厚なスープは煮詰めて作るが、朝でき上がった状態を夜まで維持する品質管理が難しく、どうしても味がブレてしまいがちだ。花月嵐では、どの店でどの時間帯に食べても、同じ味になるように製法が標準化されている。

 また、他の家系ラーメンの店ではスープが濃厚過ぎると感じる人のために、卓上に無料トッピングの刻み生姜が置いてあるが、花月嵐では置いていない。最初からスープに生姜を溶け込ませて、スッキリ感を出している。そのため、藤崎家の味は口に運んだときには濃厚に感じるが、後味はスッキリしており、ついつい癖になる仕様となっている。

 脂っこく見えるラーメンであるのに、スープにあっさり感、スッキリ感があるのは、主力商品「嵐げんこつらあめん」の特徴でもあり、藤崎家は花月嵐の作風によって表現された家系ラーメンの新しい形と言える。

photo らーめん花月嵐

期間限定のご当地ラーメンを全国で展開

 ではなぜ、同社は横浜家系ラーメンのような、主力商品と毛色の違うラーメンを期間限定で売るのか。

 同社が直営1号店となるラーメン専門店「花月」をオープンしたのが92年。最初はしょうゆラーメンの店としてスタートしたが、翌93年に嵐げんこつらあめんのルーツとなる「ニンニクとんこつラーメン」を販売した。当時は九州とんこつラーメンのブームがあり、その潮流に乗ってヒットした。

 そこで花月は個人商店が7割を占めると言われるラーメン業界も、ハンバーガー、牛丼のような外食チェーンの時代になると考え、ラーメンチェーンを目指した。94年には法人改組し、フランチャイズ1号店をオープンさせている。

 期間限定ラーメンは全国展開していく中、常に店から新しい商品を発信して、顧客の来店動機につなげるために考案された。ご当地ラーメンを全国の店で提供したところ、「世の中にはこんなラーメンもあったのか」と大きな反響となり、期間限定ラーメンの企画が定着した。過去には「広島 尾道ラーメン 彩海」や「新潟 燕三条系ラーメン旬香」などが人気を集めた。

 他にも、例えばジロリアンと呼ばれる熱狂的なファンを持つ「ラーメン二郎」のラーメンは、直系、インスパイア系をあわせて、ほぼ東京とその周辺の首都圏でしか食べることができないが、このようなご当地の味も、全国チェーンの強みを生かして、どの地方でも気軽に味わってもらえるようした。「ラーメン文化の発展に寄与するのではないかという発想で取り組んでいる」(同社)という。

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