――ステージ3に上がるには異業種との連携が不可欠です。このあたり日本企業は苦手としているのではないでしょうか。
外国の企業が必ずしも日本より格段に得意かと言うと、そうでもないと思います。ただし、なぜ他社とアライアンスしたり、パートナリングしたりしなければならないのかと言えば、異業種の企業を引っ張ってこないと、もはや目の前の顧客のニーズに応えられないからです。
例えば、ある人の健康を増進するのに、フィットネスクラブも必要だ、医者も必要だ、薬局も巻き込もうと考えなければ、本当に顧客の求めるヘルスケアサービスは提供できません。日本企業には、モノを提供することが顧客のニーズにダイレクトに応えるという時代が確かにありました。かつて顧客のニーズというのは、クルマがほしい、クーラーがほしい、全自動洗濯機がほしいというもので、仕様通りにそれを作って提供することが顧客の満足度を高めました。そのときに多くの企業は成功したわけですが、いまだにそこから完全に抜け出せていないのです。重要なのは、異業種とパートナリングすることではなく、目の前の顧客のニーズに応えることです。
今の日本社会はモノそのものはあふれ返っています。それよりも自分の人生の目的や価値観に従って、豊かな暮らし、健康、教育などを得たいと考える人が多いです。そうしたニーズをとらえていれば、おのずとアライアンスしようという気になるはずです。日本企業は苦手なのではなく、顧客のニーズをとらえていないからなのでは。
今のオープンイノベーションに関する動きにしても、製品やサービスの開発に向けた技術にフォーカスしたようなシーズドリブンですよね。何か新しいアイデアを生み出そうとする一方で、本当に顧客のニーズを見ているのかどうか。とても疑問です。
――海外企業は今どのステージにいるのでしょうか?
GEやミシュラン、ネスレなどはステージ2で、若干海外が先行しているかもしれませんが、そこまで日本と大きな差はありません。
――日本企業が追い抜くチャンスはまだあるということですか?
デジタルネイティブのコンシューマーとの接点を押さえているグーグルやフェイスブック、あるいは購買の接点を押さえているアマゾンや楽天といったプレイヤーがいて、それらの領域はある程度勝負がつきました。これから検索エンジンの世界でグーグルがどこかに負けるとは思わないですよね。
ただ、サーキュラーエコノミー(再生し続ける経済環境を指す概念)の領域はまだこれからです。UberやAirbnbのようなサービスが出てきましたが、まだマジョリティではありません。モノづくりで立国した日本、そして日本企業だからこそ、シェアリングエコノミーやサーキュラーエコノミーが注目される時代に今までの蓄積が生かせないのかなという思いはあります。
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