拡大する中古市場 経済にとってプラス?“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2017年05月31日 06時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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中古市場の拡大は経済成長の原動力となる

 こうした中古市場の拡大については、社会や経済に対してマイナスの影響をもたらすのではないかと懸念する声がある。生産量の抑制につながるなど、一部ではそうした面があることは否定できないが、筆者は長い目で見た場合、中古市場の拡大は経済にとって好影響をもたらすと考えている。その良い例が米国の住宅市場である。

 日本では住宅流通量に占める中古住宅の割合は10%台だが、欧米では流通する住宅の7〜9割が中古である。では、欧州や米国の住宅関連市場は縮小する一方なのだろうか。むしろその逆である。中古市場が活性化することで、住宅の資産価値が維持され、住宅市場は日本とは比較にならない規模に成長している。

 中古住宅が大量に存在することで、消費者が住宅そのものにかけるコストが安く済み、その分、断熱やインテリアなど、住宅の質を高める産業分野にたくさんのお金が回る。結果的に中古市場の拡大は経済全体を活性化しているのだ。

photo 欧米では流通する住宅の7〜9割が中古(『中古住宅流通シェアの国際比較』出典:国土交通省)

 最近、メルカリで発生した現金出品問題についても同じ文脈で捉える必要があるだろう。これは事実上のヤミ金融であり、こうした用途に悪用されないよう、運営者側が対策を講じるのは当然のことである。だが、こうした不適切な利用形態については、もっと大きな枠組みでの議論が求められる。

 日本では過度な取り立て問題から消費者金融に対する規制を強化し、事実上、消費者金融業界を縮小させてしまったが、こうしたサービスに依存していた多重債務者をどう救済するのかという部分については、まったくといってよいほど対策を講じなかった。

 その結果、行き場を失った一部の多重債務者がフリマ市場に流れ、そこに資金を提供する新しいヤミ金事業者が登場してきたという面があることは否定できない。中古市場は社会インフラであるという認識を持ち、サービス単体でその是非を議論するのではなく、社会全体で解決策を見いだす方向性を重視すべきだろう。こうした感覚こそが、成熟社会では求められている。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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