YouTube「子ども向け動画」に好機 出版社など手応え専用アプリも登場

» 2017年06月01日 11時17分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 Google日本法人は5月31日、子ども向けに開発したYouTube視聴用アプリ「YouTube KIDS」を公開した。使いやすい専用スマートフォン・タブレットアプリの提供で、子どもとその家族の利用を拡大する狙いだ。YouTubeでは子ども・ファミリー向け動画の人気が高く、大手出版社が公開したオリジナル動画が数百万回再生されるケースも出てきているなど、活用実績も増えている。

YouTube KIDS登場。出版社はYouTubeでの展開に手応えを感じている

アルゴリズムで動画をフィルタリング

 YouTube KIDSは、2015年に米国を皮切りに公開し、日本を含む世界28カ国目、7言語で展開。AndroidとiOS向けがあり、無料で利用できる。

 コアターゲットは2〜10歳。分かりやすいデザインや音声検索機能など、子どもでも使いやすい設計で視聴できるのが売り。世界で毎週800万ユーザーが300億回以上動画を視聴しているという。

マリーク・デュカード グローバルFamily&Learningコンテンツディレクター

 コンテンツは「アニメ・ドラマ」「おんがく」「まなぶ」「はっけん」──の4カテゴリーで、アルゴリズムによってフィルタリングされた動画を掲載する。保護者の設定で、検索機能をオフにしたり、タイマーで視聴時間を制限するといったことも可能だ。

 YouTubeのマリーク・デュカード グローバルFamily&Learningコンテンツディレクターによると、ファミリー向け・教育などのコンテンツは、YouTube上で最も拡大しているカテゴリーの1つという。「日本も同様で、重要な市場であることから、十分な時間をかけてYouTube KIDSが日本のファミリーにも適していると確認した」と説明する。

小学館など、子ども向け動画に手応え

 コンテンツパートナーの講談社、小学館、東映アニメーションなどの動画が掲載される。各社とも既にYouTubeで子ども・ファミリー向けコンテンツを配信しており、5月31日に開かれた記者発表会では、各社の担当者がこれまでの実績を紹介した。

コロコロチャンネル(小学館)

 未就学児〜小学生の男子向け漫画誌「コロコロコミック」(小学館)の和田誠編集長は、雑誌内のアンケートから、ターゲット層がYouTubeで動画を見ていることに気づいたという。

 「最初は『今後まずいんじゃないか?』と思っていたが、一緒にやったほうがいいと考えを変えた」という。そこで、編集部で立ち上げたのが「コロコロチャンネル」だ。現在はチャンネル登録者数が13万6000人を突破、10万再生を超える動画も多い。

 雑誌に掲載した企画を動画で見せることで、より楽しく分かりやすく伝えることを目指しているという。また、掲載漫画をテレビアニメ化した作品の「見逃し配信」もしており、7月にはYouTube限定の記念アニメも配信する予定だ。

 「チャンネル全体でめきめき視聴回数が伸びている。雑誌の増大にもつながっている」と手応えを感じている。

キッズボンボン(講談社)

 かつて発行していた児童向け漫画誌の名前を冠した講談社「キッズボンボン」は幼児向けチャンネル。「子どもがみたい、子どもにみせたい」をキャッチコピーに、絵本、童謡、手遊びなど、子どもたちが学べる動画を配信している。

 コンテンツの1つ「絵本の読み聞かせ動画」は、「ママがおばけになっちゃった!」などの人気絵本を、イラストと文章に読み聞かせの音声を加えた動画として公開している。

 同社動画事業チームの安永尚人編集長は、読み聞かせ動画の公開について社内で議論があったと明かす。「絵本はコンテンツとしては短い。動画にすると5〜10分。これを公開することで、絵本が売れなくなってしまうのでは? という声はもちろんあった。しかし、途中までの動画では単なるプロモーション。コンテンツとして動画を出していきたいと考えた」という。

 絵本作家たちも「最後まで見てほしい。子どもたちも途中で終わったら残念がるだろう」と背中を押した。こうして公開された「ママがおばけに〜」は約290万回も再生され、コメント欄には大人からも感動したという感想が投稿されている。幼稚園などから「キッズボンボンの動画を流したい」といった要望が相次ぐなど、予想外の反響もあったという。

東映アニメーション公式チャンネル/プリキュア公式チャンネル

 東映アニメーションは、アニメや特撮など放送中の作品の告知や、オープニングテーマやまとめ動画などの付随したコンテンツを公式チャンネルで公開している。

 プリキュアの生みの親として知られる同社の鷲尾天氏は「東映アニメには映像コンテンツがたくさんあるので、できる限りお届けしたい。東映アニメのキャラクターを、世界中の子どもに見せたい。今後、目玉になるのは、YouTube用に開発したコンテンツを出すことだと考えている」と語る。

 人気児童書「おしりたんてい」をアニメ化するプロジェクトをスタートし、5月31日からYouTubeで予告編の配信を始める。

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