この他にも、ホールフーズ・マーケットの買収で注目すべきことがある。それはホールフーズが出店しているロケーションだ。ホールフーズは、オーガニックやグルメな食材を求める人が比較的多い、都心部の富裕層が住むエリアを中心に店舗を構えている。
実際に、全米440店舗のロケーションすべてを合わせると、米国の富裕層世帯の3分の1をカバーすることになるという。低価格を売りにしてきたアマゾンからすると、今までとはまったく違った環境の顧客層を手にすることになる。そうなれば、食品以外でも、さまざまな富裕層向けの商品をアピールすることもできる。
アマゾンが、本やメディア、食料品業界などに進出していることで、ついつい忘れそうになるが、アマゾンはもともとIT企業だ。そしてアマゾンの技術力は、食品分野でも生かせることになる。
アマゾンは現在、レジがなく、店内に設置されたセンサーやビデオカメラなどを使い、来店者が購入する商品を独自に認識し、直接アカウントに自動的に課金するという未来型の店舗「Amazon Go」の実用化を目指している。これがホールフーズ・マーケットで次々と実用化される可能性もある。
ほかには、AI(人工知能)を搭載し、話しかけるだけで操作ができるスピーカーの「Amazon Echo(アマゾンエコー)」を開発している。アマゾンエコーを使えば、話しかけるだけでアマゾンから生鮮食品や日用品などを買うことができてしまうのだ。
さらには2017年3月に米カリフォルニア州で初めてデリバリーを成功させたアマゾンのドローンが、注文してすぐに自宅までホールフーズのオーガニック食品を運んできてくれるだろう。
これらの最新テクノロジーを使い、ホールフーズ・マーケットの店舗などで、よりシームレスなショッピング体験が可能になる。そして消費者の利便性はますます高まることになるだろう。
とりあえずは、ホールフーズ・マーケットの買収で、リアル店舗を手にいれたアマゾンが、今後どのように食品業界の常識を破壊していくのか注目だ。
藤井薫(ふじい・かおる)
大学を卒業後、広告代理店や出版社を経てライターに。
『POPEYE』『an・an』(マガジンハウス)や『GLAMOROUS(グラマラス)』(講談社)などで、ファッション、ビューティ、ビジネスなど幅広い記事をカバー。日本と海外を頻繁に行き来して、海外トレンドを中心に情報発信している。
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コンビニ「Amazon GO」になれるのかCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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