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» 2017年07月12日 15時30分 公開

「無印良品」がデジタルで生み出す“リアル体験”顧客満足度向上へ(2/2 ページ)

[ITmedia]
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ネットと店舗の相乗効果を発揮

photo 良品計画WEB事業部部長の川名常海氏

 特別講演は、良品計画WEB事業部部長の川名常海氏。無印良品のデジタル戦略の歴史や考え方などを語った。

 同社がインターネットビジネスに参入したのは2000年ごろ。ネット通販はまだ珍しく、最初は苦戦した。商品戦略や販売戦略が実店舗とは異なり、店舗にとっては「ネットに売り上げが取られる」という感覚。顧客に配布するカタログから、ネットストアの案内部分を切り取ってしまう店長もいたという。

 ターニングポイントは03年。ネット戦略を大きく転換したことがきっかけだ。無印良品のWebサイトを閲覧する顧客は増えてきたものの、ネットストアで購入したことがある人はそのうち4割。その比率は今も変わらない。では、購入していない人たちはWebサイトで何をしているのか。最も多いのが、商品のチェックだ。つまり、ネットで調べて店舗で商品を確認して購入している。

 「ネットと店舗を行き来している購買行動が見えてきた。そうなると、店舗対ネットという話ではない。2つのチャネルが相乗効果を発揮することが必要だと考え直した」(川名氏)。

 実施したのは、現在では「O2O(Online to Offline)」としてよく知られている手法。ネット会員に対してクーポンを発行し、携帯電話にメールで送付すると、多くの顧客が店頭でクーポンを使うようになった。「ネットが店舗への送客につながることが体感できるようになり、店舗でもネットメンバーを獲得しようという動きが活発になった」と川名氏は振り返る。

顧客との関係を深めるスマホアプリ

 08年ごろからは、スマートフォンやSNSが普及し、ネットを活用したビジネスの市場も急拡大した。商品購入に至る意思決定のプロセスが大きく変化する中、良品計画のデジタル戦略も進化を遂げる。

 「マーケティングで大事にしているのは、なぜ無印を知ったのか、なぜ来店したのかという購買前の行動。そして、もっと大事なのは、売ってからのこと。本当に満足してもらえているか、どんなライフスタイルに取り入れているか。購買の前後を重視しています」(川名氏)。顧客との良い関係を長期的に継続するために、「顧客をもっと理解したい」という思いがあった。

 そこで構想したのは、スマホアプリの会員証「MUJI passport」。買い物などで使える「マイル」がたまる仕組みだが、購入すればたまる、という単純なものではない。来店前に商品をチェックしてもマイルがたまる。商品の口コミや改善アイデアなどを投稿するとマイルがたまる。店舗にチェックインするだけでもマイルがたまる。「お客さまとMUJIの関係性を示すマイル」(川名氏)になっている。

 特に、手軽にできるチェックインは「みんな大好き」(川名氏)。1ユーザーにつき、平均で月4回程度チェックインするという。店舗から少し離れていてもチェックインできるため、朝は山手線に沿ってチェックインの軌跡ができる。沿線の店舗付近を通過するときにチェックインしているのだ。「実際に来店していなくてもいい。毎朝、無印を思い出してもらえることが重要」と川名氏は話す。

 13年にMUJI passportを立ち上げ、現在までに980万ダウンロードを突破。店舗では、約37%の客がレジでアプリを使うという。会員向けセール期間「無印良品週間」には60%程度まで引き上がる。実店舗にも、デジタルマーケティングの手法や重要性が浸透している。

 最後に川名氏が強調したのは、デジタルマーケティングとは、「デジタル時代に求められるマーケティング」だということ。顧客がデジタルを使いこなす時代に、Webサイトやスマホアプリなど、デジタルツールだけを最適化しても顧客満足にはつながらない。「守備領域をリアルな接点にまで拡張し、『いい“体験”をつくる』というスタンスが重要」と語った。

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