コラム
» 2017年07月19日 06時30分 公開

AIが囲碁や将棋の必勝法に及ぼす影響は?人間対コンピュータ(2/3 ページ)

[中村亮一,ニッセイ基礎研究所]
ニッセイ基礎研究所

コンピュータによる囲碁・将棋の必勝法の完全解明の可能性

 その意味で、コンピュータプログラムなどの進展によって、これらのゲームの必勝法の完全解明がなされることがあるのだとすれば、大変興味深いことである。

 ただし、これだけコンピュータの性能が向上している現在においても、囲碁や将棋について、その全てのパターンを解析して、結論を導き出すことについては相当な負荷がかかり、新たなIT技術の適用が可能になってくれば、実現してくる可能性もあるのかもしれないが、現段階での実現はかなり困難なことと考えられている。

 実際に、計算機科学者の松原仁公立はこだて未来大学教授によれば、勝負が付くパターンの数について、結論が出ているチェッカーや「6×6のオセロ」の場合には、10の30乗のレベルであるのに対して、(8×8 の)オセロは10の60乗、チェスは10の120 乗、将棋は10の220 乗、囲碁は10の360乗のレベルになるとのことである。

 ちなみに、太陽の寿命は100億年程度と言われているが、これは約3.2×10の17乗秒ということになるので、先の数値がいかに大きな数であるかが分かる。

コンピュータによる囲碁・将棋の必勝法の解明の進展

 そこで、まずは、高い能力を有するコンピュータプログラムの対局を通じて、囲碁や将棋の先手の有利性の程度等を少しでも解明していくことができるのであれば、それが当面の現実性のある目標ということになるものと思われる。

 例えば、AlphaGo同士の対局を通じて、現在のトップレベルの対局ではどの程度の「コミ」が適正なのか、今後囲碁の技術が進歩していくと先手の有利性の程度はどのように変化していくことになるのか、というようなことが解明されていけば、大変面白いのではないかと考えられる。

AlphaGoのサイト AlphaGoのサイト

 ただし、グーグルは、AlphaGoで培った技術を医療やエネルギー分野に応用することに注力するということで、今回の勝利の後に人間との対局については終了することを表明している。

 AlphaGoは、「深層学習(Deep Learning)」という人間の脳をまねた多層構造のニューラルネットワークを用いた機械学習と、「強化学習(Reinforcement Learning)」という自己対局の繰り返しによって、自らで勝ち方を生み出すシステムを作り上げているようである。

 これによれば、今後こうしたコンピュータプログラム自身が、これまでにない新たな戦法を開発していくことも期待されていくことになる。これまでに人間が考え出した戦法に基づいて得られている結果が、コンピュータによる対局で異なる結果となっていくことも考えられることになる。なお、ディープマインド社は、柯潔氏との対戦終了後、AlphaGo同士の棋譜50局を公開したが、これによれば、これまでの常識では考えられない手が続出していたとのことである。

 今後とも、AlphaGoなどのコンピュータプログラム同士による対局は引き続き一定程度行われていくことになるものと思われる。それでも、人間を超える実力を備えるという目標を達成した後では、先に述べたような興味関心への分析に対しては、これまでのような資源配分は行われないものと思われる。本来的な AI の応用に注力していくことになるのはやむを得ないものと思われるが、若干残念な気もしている。

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