藤沢をワインの街に! メルシャンが地域活性化に一役全国トップの生産量

» 2017年08月15日 06時35分 公開
[伏見学ITmedia]
メルシャン藤沢工場で製造している国産デイリーワインの「ボン・ルージュ」 メルシャン藤沢工場で製造している国産デイリーワインの「ボン・ルージュ」

 国内ワインメーカー大手のメルシャンが地域との結び付きを強めている。製造工場を構える神奈川県藤沢市と2017年3月に包括的連携協定を締結し、「日本一のワインの街」として藤沢を双方で盛り上げていく。

 両者は以前から、市内の商工業製品および特産品などを展示する「ふじさわ産業フェスタ」や、「藤沢ワイン祭り」などのイベント開催で協業していたが、20年にメルシャン藤沢工場が設立100周年、藤沢市が市制施行80周年という節目を迎えることから、連携強化が一気に加速した。

 包括的連携の内容は、ポリフェノールに代表されるワインの健康機能の情報提供や、学校給食の調理にメルシャンのワインを使用する地産地消の取り組み、互助型認知症セーフティネットの構築、帰宅困難者への支援、「藤沢マイスター」に選ばれた滝沢英昭氏をはじめとするメルシャン社員の講演会など多岐にわたる。

20年に向けてメルシャンと藤沢市が連携を強化 20年に向けてメルシャンと藤沢市が連携を強化

なぜ魚介類とワインで生臭みを感じるのか?

 メルシャンの起源の1社である大日本醸造が藤沢に工場を開設したのは1920年。横浜港から近く、物流の拠点として最適なことなどからこの地が選ばれたという。

 現在、国内製造デイリーワインの製造と包装、輸入ワインの国内ボトリング、甲類焼酎やブランデー、発酵調味料などの製造、包装を行う同工場は、全国トップのワイン生産地なのである。国税庁調べの2015年の都道府県別果実酒課税出荷数量によると、1位は神奈川県の4万951キロリットルで、2位の山梨県(2万78キロリットル)に倍以上の差をつけている。実は神奈川の90%以上に当たる数量がこの藤沢工場で製造されているのだ。

メルシャン藤沢工場の外観 メルシャン藤沢工場の外観
工場内部の様子 工場内部の様子

 ここでは「ビストロ」や「ボン・ルージュ」といったデイリーワインを製造するほか、「フランジア」「ワールドセレクション」(関連記事)など輸入ワインの瓶詰めを行う。同社は瓶のまま海外から輸入するのではなく、1個あたり24トンのパックにワインを詰めて輸入する。なぜなら輸送に関わる二酸化炭素(CO2)排出量の削減や配送コストの抑制に加え、日本の品質基準に則って瓶詰めを工場で行うことで商品の安心、安全を確保できるからだ。

 同工場には、親会社であるキリンのR&D本部 ワイン技術研究所も併設。ワインの原料である果実のおいしさや健康機能などのポテンシャルを引き出す技術開発から商品開発までを一貫して行っている。例えば、魚介料理とワインを同時に口にした際に生臭みを感じることがあるが、この原因はワインに含まれる「鉄」であることを同技術研究所で発見、この物質を独自技術でほぼ取り除く「フードマッチ製法」を世に発表した。これを商品化したワインがビストロである。

 また、赤ワインに含まれるポリフェノールの中で、アントシアニンとタンニンに注目。前者は渋味や苦味が穏やかで、後者は渋味や苦味が強いという特徴があるが、このバランスを操作して、通常よりもポリフェノールが多いのに渋味や苦味が弱いワインを作れないか考えた。その結果、果皮のアントシアニンは抽出し、渋味のタンニンは抽出しないという熱抽出技術を応用した原料開発を実現した。これによって生まれた商品が、天然ポリフェノール2倍のボン・ルージュである。

 このように藤沢工場では単に商品の製造にとどまらず、ワインの魅力を引き出し、消費者に価値を分かりやすく伝えるための取り組みが日夜行われているのだ。

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