大ヒット商品「ザクヘッド」の企画を持ち込んだバンダイ・誉田氏の行動力【前編】

20万個以上の売り上げをたたき出したバンダイのカプセルトイ商品「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」。この商品の仕掛け人である同社 ベンダー事業部 企画・開発第一チームの誉田恒之氏はいかなる人物なのか。その素顔に迫った。

» 2017年09月11日 10時00分 公開
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 2017年2月、おもちゃメーカー大手のバンダイから発売されたカプセルトイ(ガシャポン)が爆発的なヒットを飛ばし大きな話題となっている。国内外での販売数はたった数カ月間で実に20万個以上。これは業界内でも異例の数字と言える。

 その商品は「機動戦士ガンダム EXCEED MODEL ZAKU HEAD」。ガンダムシリーズに登場するモビルスーツ「ザク」の頭部を精密に再現したもので、最大の特徴はカプセル自販機で商品を内蔵するためのプラスチックのカプセルを排除して、球状の商品がそのまま出てくるようにした点である。

シャア専用ザクII (C)創通・サンライズ シャア専用ザクII (C)創通・サンライズ
球状態となった商品 (C)創通・サンライズ 球状態となった商品

 規定のカプセルサイズにとらわれないことで、商品のパーツを極限まで大きくすることが可能となり、組み立て後の商品サイズは前後幅が約100ミリメートル、全高が約65ミリメートルと、ガシャポン史上で最大級のサイズを実現するに至ったのである。そうした目新しさや意外性などがガンダムファン以外の消費者の興味もひき、500円というカプセルトイの中では高額な価格であるにもかかわらず、このような大ヒットにつながったのである。

 その仕掛け人が、同社 ベンダー事業部 企画・開発第一チームでアシスタントマネジャーを務める誉田恒之氏だ。実は誉田氏はこれまでにもいくつかの人気商品を生み出したヒットメーカーであるのだが、そうした商品作りを支えるのは“型破りな行動力”にある。

国内外で数々の部署を渡り歩く

 誉田氏は20数年前にバンダイに入社。最初に男の子向けのおもちゃを扱う部署に配属となり、商品開発の仕事にかかわった。1年後に営業部門に異動し、それから8年間、国内営業を担当することになった。

 当時から国内おもちゃ市場においてバンダイは圧倒的なシェアを持っていた。スーパーマーケットや小さなおもちゃ屋にも同社の商品は必ずといっていいほど並んでいた。誉田氏は営業のおもしろさにのめり込んでいったものの、新規に市場や顧客を開拓するようなダイナミックな仕事に刺激を求めるようになったのである。

 そうした中、社内で海外営業勤務の公募があった。「バンダイは海外ではまだまだ大手ではありませんでした。その中で新たな市場を切り開いていくことに挑戦したい」――そう強く思った誉田氏は迷わず手を挙げた。その希望が通り、香港の支社に移ることになった。

 ここで想定外のことが起きる。当初は営業を希望しての赴任だったのが、生産部門の人手が足りないということで、しばらくそちらの仕事をしてほしいということになった。半年間という話だったが、気が付けば9年間も従事することになったのだ。実はこの“誤算”が後々の誉田氏の活躍ぶりに大きな影響を与えるのだ。

 香港に駐在後、フランスの拠点に移って3年間、商品開発を担当。そして日本に戻り、ハイダーゲット商品を多数扱うコレクターズ事業部に2年間所属した後、カプセルトイを手掛けるベンダー事業部にやって来たのだ。2017年3月までは仕入れ担当で、4月から現在の開発チームに入った。

 このように、誉田氏は国内外問わず数々の部署を渡り歩いてきたわけだが、実はこうしたジョブローテーションはバンダイにとってはよくあることらしい。基本的に1つの部署に5年もいるとほかの部署へ異動希望を出すことが推奨されているそうだ。

 異動が多い理由について、誉田氏は「同じことをやっていると新しい発想が生まれにくくなります。3〜4年もやっていると、すでに市場で売れている商品ばかりを追いかけてしまい、新しい商品がなかなか浮かんでこないといったことがよくあるのです。バンダイの場合は、単に経験を積ませるというよりも、さまざまな人間をこれまでとは異なる部署に異動させて、常に新しい発想を生ませようとしているのだと思います」と考えを示す。

 そうした観点で見ると、バンダイという会社は事業部によってフィールドがまるで異なるため、異動した社員は新しい会社に入ったかのような気持ちになり、仕事の幅を大きく広げる機会に恵まれているのだ。

新しいアイデアで驚きを与えることができれば売れる

 その社風が表れているのは部署異動の多さだけでない。バンダイは所属する部署を問わず、声を出した人間のアイデアをどんどん採用する文化がある。実際、誉田氏が携わったザクヘッドも、実は仕入れチームにいたときに自ら考えて、商品開発チームに持ち込んだ企画である。

バンダイ ベンダー事業部 企画・開発第一チーム アシスタントマネジャーの誉田恒之氏 バンダイ ベンダー事業部 企画・開発第一チーム アシスタントマネジャーの誉田恒之氏

 では、どのようにこの企画は生まれたのだろうか。この1〜2年、カプセルトイの市場は右肩上がりとはいえず平衡化していた。それをはたから見ていた誉田氏はやきもきした気分だったという。

 「社内でも新しいものを作ろうという話はあったのですが、販売リスクなどを恐れてなかなか思うようにできていませんでした。それならば、どうにかして自分で変えてやりたい、新しいアイデア商品を出してお客様に驚きを与えることができればこれだけ売れるのだということを証明したかったのです」

 誉田氏のライフワークとも言えるのが、どの部署にいても常に新しい商品アイデアを考え、ストックしていることである。なぜなら斬新なアイデアというのはあるときぱっと浮かぶのではなく、頭の中に溜め込んでいるアイデアとアイデアを掛け合わせることによって生まれるという持論があるからだ。

 その引き出しの中からさまざまなアイデアの組み合わせパターンを考えた。「ただし、外部から持ち込む場合、商品開発チームが思い付くようなものでは意味がありません。絶対に浮かばないようなアイデアを探すことが企画持込みを成功させるために不可欠な要素でした」と誉田氏は話す。そこで熟考した末に出てきたのが、カプセルを使わないカプセルトイだった。

 斬新なアイデアが必要だというのは、商品開発チームをはじめ社内を説得するためだけのことではない。今やお客様があっと驚くようなものでないとカプセルトイはヒットさせられないのだという。

 「カプセルトイの場合、好きなキャラクター商品の発売を事前に知って買いに行くという人はあまり多くはいません。町中にあるカプセル自販機の前を通りかかった人が衝動買いするケースが多いのです。彼らの足をいかに止めて、自販機を回してもらうかが大切で、そのためには何かしら新しいもの、出てくる商品が想像できないようなものでなければヒットに繋げることが出来ません」

香港で身に付けたコスト感覚

 ただし、カプセルトイが難しいのは、お客様を驚かせるようなアイデアが浮かんでも、それがすぐに商品化できるとは限らない。最も重要なのはコストバランスがしっかりとれているかどうかだ。

 他のおもちゃと違って、カプセルトイは価格が100〜500円と安い。従って、商品のパーツなどの仕入れ原価も1円単位で切り詰めていかなければならないほどシビアな世界である。実際にアイデアを思い付いても、コストが合わないからと商品化を断念するケースは多いのだという。

 今回のザクヘッドも企画段階から厳密なコスト管理を行ったわけだが、この点において誉田氏は強い自信を持っていた。香港で生産部門の仕事をしていた際、工場の現場で常に商品のコスト試算をしていたため、アイデアを商品化する際に、すぐにコストの算段ができるスキルが身に付いたのだ。

 「通常の商品開発だと、こういうものが作りたいと生産メーカーに要望を投げて、それだと費用がいくらかかるという回答を基に判断するため、原価ギリギリの商品を作るのは至難の業です。けれども、私はコスト試算ができるので、最も効率の良い仕様にまとめることが出来ますし、メーカーを通さずに直接中国工場とやり取りして極限までコストを詰めた商品を作ることが可能です」

 細かくコストを管理するとともに、ザクヘッドは色のバリエーションを持たせているので、1種類の金型で複数商品を横展開できるようにした。これによって開発にかかるコストを大幅に抑制し、その分、質の高いものができたのだ。

 こうして商品化にこぎつけたわけだが、すんなりと発売できたわけではない。誉田氏はこれまでほとんど経験したことのないような壁に直面することとなったのだ。【後編に続く

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アイティメディア営業企画/制作:ITmedia ビジネスオンライン編集部/掲載内容有効期限:2017年9月24日