ちなみに、この「勘違い」こそが、大きな震災が起きるたび、現地でマスコミが被災者から大ブーイングの「報道被害」を繰り返す最大の理由である。
ご存知のように、山尾さんは元検察官だ。悪を断罪する「正義」の番人だったくらいだから我こそ正義だという自負があるというのは容易に想像できよう。そんな山尾さんを擁護しているマスコミも、そこで働く人たちは己を「正義」だと信じて疑わない。
こういう人たちが「ダブスタ」のワナに陥りやすいというのは、「正義」が大好物なアメリカなど西側諸国の言い分を見てみると、よく分かる。
おととい、フランスが北朝鮮の核を「欧州の脅威」だと批判した。それを聞いた北の高官は、「核兵器がそんなに悪いものだというなら、まずは核の脅威に全くさらされていないフランスが核兵器を放棄せよ」(9月10日、AFP)と西側諸国の「ダブスタ」を持ち出して反論したという。日本人としては北のやっていることは決して容認できるものではないが、「国際社会」という名の一方的な正義を押し付けられ、意固地になっている北の姿はかつての日本と妙に重なる。もちろん、共感はしないが、彼らの言いたいことも分からんでもない。
お前らは悪者だからダメだけど、我々は善人だから許される――。「ダブスタ」のワナとは、「正義」をこじらせたところから始まるのかもしれない。
日本ではあまり馴染みがないが、海外では政治家や企業が自分に有利な情報操作を行うことを「スピンコントロール」と呼ぶ。企業戦略には実はこの「スピン」という視点が欠かすことができない。
「情報操作」というと日本ではネガティブなイメージが強いが、ビジネスにおいて自社の商品やサービスの優位性を顧客や社会に伝えるのは当然だ。裏を返せばヒットしている商品や成功している企業は「スピン」がうまく機能をしている、と言えるのかもしれない。
そこで、本連載では私たちが普段何気なく接している経済情報、企業のプロモーション、PRにいったいどのような狙いがあり、緻密な戦略があるのかという「スピン」に迫っていきたい。
テレビ情報番組制作、週刊誌記者、新聞記者、月刊誌編集者を経て現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌へ寄稿する傍ら、報道対策アドバイザーとしても活動。これまで100件以上の広報コンサルティングやメディアトレーニング(取材対応トレーニング)を行う。
著書は日本の政治や企業の広報戦略をテーマにした『スピンドクター "モミ消しのプロ"が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)など。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。
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