「3つのバリュー」から生まれる“メルカリ流”働き方急成長する組織を支える

» 2017年10月16日 07時00分 公開
[ITmedia]

 働き方改革を成功させるキーワードの1つが「社員の意識改革」だ。残業抑制などのルールを改めても、社員の意識がそろわなければ運用がおろそかになってしまう。最悪の場合、改革が机上の空論に終わってしまうこともあるだろう。

 フリマアプリ「メルカリ」とともに急成長を遂げるメルカリは、同社が定めた「バリュー」に基づいて人事制度を設計し、社員の働き方を方向付けているという。バリューに基づく働き方とは何か。また、社内に働き方をどのように浸透させているのか。組織運営のポイントを、メルカリのHRグループマネジャー石黒卓弥氏がITmedia ビジネスオンラインとITmedia エンタープライズが共催するセミナーで語った。(当日資料

3つの「バリュー」に基づいて制度や戦略を設計する

 メルカリの従業員数は約500人。東京や仙台、福岡をはじめ、サンフランシスコやロンドンなどの海外拠点も有する。同社は「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレースを創る」をミッションに掲げており、それを達成するために3つのバリュー(行動指針)を設けているという。

 「Go Bold:大胆にやろう。All for One:全ては成功のために。Be Professional:プロフェッショナルであれ。この3つのバリューが、組織・採用・評価・制度など全ての人事戦略を設計するベースとなっている」(以下、石黒氏)

メルカリ石黒卓弥氏

 例えば、石黒氏が所属するHRグループのミッションは「思い切りやったことに対して、適正に評価すること(Go Bold)」「メンバーが思い切り働ける環境をつくること(All for One)」「当社にとって価値のある優秀なメンバーを集めること(Be Professional)」の3つだ。それぞれがバリューにひも付けられている。

 制度の運用においては「Webサービスを作るように運用する」ことを意識しているという。

 「シンプルで使いやすいことが大前提。また『人事が決めたことは絶対』と無条件に信じるのではなく、たとえ決定事項でも状況次第で見直す勇気が必要。All for Oneの考えのもと、常に制度をアップデートできる仕組みを設けている」

計画→実行で大事にしていること

「ルール」ではなく「バリュー」

 メルカリが2016年に導入した新人事制度「merci box」では、産休・育休中の給与100%保障をはじめ、妊活・病児保育支援、認可外保育園補助、介護休業などの施策を段階的に進めている。こうした人事制度のベースにあるのも3つのバリューだ。

 「『Go Boldに思いっきり働ける環境をつくる』という考え方が根底にある。働く不安を取り払い、成功のためにプロフェッショナルを発揮してもらうために制度がある。常に3つのバリューに立ち返って、設計・運用を行っている」

 コミュニケーション関連では、ランダムに選ばれた5人がランチを共にする「シャッフルランチ」や、新入社員をランチに招待して交流を図る「メンターランチ」、同社に入社を希望する知人と食事をする「採用会食」など、会社が食事代を負担する制度を多数用意。制度の利用に伴う精算業務を軽減するため、本社周辺の飲食店15店舗と連携した「立替不要レストラン制度」も設けた。

 「他人に無関心では、社員同士の信頼が失われ、All for Oneのバリューに反することになる。施策を運用すると同時に、精算処理を削減するなど本来の業務に時間を割けるよう心掛けている。バリューに基づいた『速さ』『実行力』『性善説』が、制度を満足に実現させるポイントとなる」

3つのポイント

カジュアルに口にすることで浸透

 「社員に3つのバリューを浸透させるための施策は?」という会場からの質問に、石黒氏は「グループワークなどの教育は行っていない」と答えた。

 「3つのバリューを構成する英単語は7つのみ。覚えやすい言葉を選び、日常会話でもカジュアルに使用して浸透させている。会議室の名称をバリューにしたり、Tシャツを作ったり、『それGo Boldだね』など気軽に口に出せる空気を作っている」

 社内へ周知する手段の1つに社内報があるが、メルカリには社内報は存在しない。代わりに、社外からもアクセス可能なメディア「mercan」を通じて発信が行われている。また、社内情報については原則オープンになっている。「給与などのセンシティブな情報以外は隠す必要がない」という考えからだ。

 「こうした発信を続けることは、ブランディングにもなる。もっとメルカリを知ってもらい、社員も誇りを持てるスパイラルが生まれるはず。会社を1枚岩に保つため、3つのバリューを念頭に置きながら、1つ1つの施策を進めていきたい」

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