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» 2017年10月16日 06時30分 公開

池田直渡「週刊モータージャーナル」:裏切らないスイフト・スポーツ (2/3)

[池田直渡,ITmedia]

素直で明るい性格

 エンジンはDOHC4バルブ、1.4リッター直噴4気筒のインタークーラー付きターボ。最近のターボらしく圧縮比が9.9と高めな上、低速から過給するので、2000回転以下という低回転から先代スイフト・スポーツの1.6リッターエンジンのピークトルクを上回るトルクが出ており、どこからでもグイグイと加速する。しかし排気量が少ないということは、物理法則的に無過給ではトルクが低く、かつ排気量が少ない分、過給圧が上がるのが遅いので、当然極低速ではターボラグは必ず発生する。しかし実際の走行においては、高いギヤで低回転まで持ち込んでスロットルをオンにするような意地悪なテストをしない限り分からない。このクルマの本分であるスポーツ走行時には、当たり前にシフトダウンを行うので、タイトターンであっても過給待ちのシークエンスには至らない。

 ターボのレスポンス対策は、技術的にはひとひねりしてあり、タービンを回す排気が増え過ぎた時にバイパスさせるウェイストゲートバルブを、デフォルトで閉めた状態にし、初期レスポンスを稼いでいるのだそうだ。過給を立ち上げる際に慌ててバルブを閉める方式に比べればレスポンスが早い理屈だ。

 最大出力は140馬力。馬力についてはぜいたくを言えばキリがないが、無制限にパワーアップすれば価格もうなぎ登りになる。スイフト・スポーツはホットハッチとして十分な性能で、楽しいと言える範囲で十分以上に速い。キビキビ、ビンビン走るのに凶悪な感じがしないのが良い。おかげでクルマとして性格が素直で明るい。

出力とタイヤグリップの向上に伴い強化されたサスペンション 出力とタイヤグリップの向上に伴い強化されたサスペンション

二兎を追わない割り切った選択

 ハンドリングはさすがスイフト・シリーズのフラッグシップ。微舵角でも正確で、大舵角でもタレない。前後タイヤのグリップバランスも良く、近年流行りのテコでも曲がろうとしないリヤタイヤのジオメトリーと比べると、切り始めから不必要に粘らず、旋回に入ってからは信頼感がある。サスペンションは硬めなので旋回中にギャップを拾った時には跳ね上げられてストンと滑るが、滑り始めも再接地時も穏やかで特別な操作を求めない。硬めと言っても胃が揺すられるような不快な乗り心地ではなく、スポーツモデルとして見れば穏やかで良い落としどころだ。

 ということで、スイフト・スポーツは「楽しい二重丸のクルマ」だが、だからと言って完璧ではない。むしろいろいろと雑なところはある。前もって書いておくが、だからと言ってスイフト・スポーツの魅力が損なわれるわけではない。個人的にはホットハッチはそういうアバタもエクボの心意気で乗るクルマだと思う。元々が安価な大衆車に無理矢理強力なエンジンを積むのだから、何も失うものがないはずはない。いろいろ分かっていて、それを飲み込んで乗るのが粋と言うものだ。ただし、それに気付いて納得して許容するのと、分からずに盲信的に賛美するのは違う。

エンジンはDOHC4バルブ、1.4リッター直噴4気筒のインタークーラー付きターボ。スズキではブースタージェットと呼称する エンジンはDOHC4バルブ、1.4リッター直噴4気筒のインタークーラー付きターボ。スズキではブースタージェットと呼称する

 これは新型スイフト全モデルの問題だが、ペダルオフセットがやはり気になる。これはシャシーをやり直さないとだめなので次世代までどうにもならない。許容できるかどうかは必ず試乗して確かめてほしい。筆者がダメだと言っても、本人が納得して乗れるのならそれで良いのだ。筆者の場合、ペダルオフセットは結構なマイナスポイントだと思うが、クルマ全体の魅力に抗いがたいものがあるので許すと結論した。

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