中国のスマートスピーカーは意外な方面ですごかった山谷剛史のミライチャイナ(3/3 ページ)

» 2017年11月08日 10時21分 公開
[山谷剛史ITmedia]
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サービス提携による強力なコンテンツ再生機能

 やや期待外れの検索に比べ、比較的期待通りの反応をするのは「〜の歌が聴きたい」「面白い話を聞きたい」「ニュースを聞きたい」といったコンテンツ視聴系だ。音楽は音楽視聴サービス「蝦米音楽(Xiami music)」、詩や短い物語などはポッドキャスト「喜馬拉雅FM(Ximalaya)」、ニュースは「微博(Weibo)」のニュースコンテンツが音声として再生される。

 例えば「テクノロジーのニュースを聞きたい」「ジャズを聴きたい」「カフェ向けの音楽を聴きたい」「誰誰の歌を聴きたい」──といったオーダーができ、お金を払う必要なく、さまざまな音楽を次々と流してくれる。曲の停止や次の曲への曲送りも当然音声でコントロール可能だ。

 無数のコンテンツが用意されているのは、アリババの過去のコンテンツへの投資があるからこそ。蝦米音楽はアリババ系の音楽サービスで、喜馬拉雅FMはアリババが投資をしている。中国は長らく海賊版天国と呼ばれていたが、近年は業界全体が正規版コンテンツの配信をするようになった。コンテンツ有料化の試行錯誤段階ではあるが、海賊版コンテンツの利用者に納得してもらえるよう、さまざまな無料コンテンツが利用できる状態だ。

 中国ネット企業の投資といえば、アリババだけでなく騰訊(テンセント)や京東も行っている。コンテンツ獲得だけが投資の目的ではないにしろ、コンテンツ系企業に投資をすることにより、スマートスピーカーなどのデバイスで様々なコンテンツが利用でき、スマートスピーカーが使えるモノとなると感じた。

 なお天猫精霊は地図サービスの「高徳地図」とも提携している。地図検索もできるかと試してみたが、天猫精霊からの音声回答は「今後対応する」とのこと。他にも様々なネットサービスとの提携は発表されているが、対応自体は今後というのが目立つ。

 現状ではあるが、天猫精霊はアリババから出ているので音声でのオンラインショッピングに向いている製品と思っていたが、使ってみればなんとなく音楽を流してほしい、話を聞きたい、というニーズに最も応えてくれたスマートスピーカーであった。百度の至愛小播と比べて検索は苦手だが、コンテンツ再生は強いといった得手不得手があることは感じた。これまでの企業の検索精度の向上と、コンテンツ企業との提携などの積み重ね、それに業界のコンテンツ提供への商習慣が、使えるスマートスピーカーを作り出す。

筆者プロフィール:山谷剛史

 フリーランスライター。一時期海外アジア経済情報を配信する「NNA」に在籍。 中国などアジア地域を中心とした海外IT事情に強く、連載記事執筆ほか、講演や メディア出演など行う。書籍では「中国のインターネット史 ワールドワイド ウェブからの独立」(星海社新書)、「新しい中国人〜ネットで団結する若者たち」(ソフトバンク新書)など。


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