「成功しない」を覆す ネット世界を走る開拓者の信念冷静な視点を持つ(4/4 ページ)

» 2017年11月15日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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VRへの挑戦も

photo VR事業について、「利用シーンとその伝え方次第で広がる」と話す森岡さん

 一方、Facebookで経験したように、既成概念にとらわれずに新しいサービスを広める挑戦を今も続けている。その1つが新規事業として取り組む「バーチャルリアリティー(VR)」だ。

 VRは、視覚や聴覚などの五感を刺激して、仮想空間を現実のように感じられる環境を作り出す技術。すでに商品化されたり、イベントなどで活用されたりしている。Supershipが開発しているのは、離れた場所にいる複数の人が、同じ場所でスポーツ観戦などをしている感覚を味わえる技術だ。一緒に観戦している人と会話をすることもできるという。さまざまな企業や機関と連携し、実証実験を重ねている。

 VRに対しても、「一過性」「長時間の利用は疲れる」「定着しない」という意見が根強く聞こえてくる。しかし、そういった意見に対して森岡さんは「VRのこと、本当に知っているの?」と疑問を投げかける。

 実証実験では、2時間半映像を流し続けても、途中でやめることなく楽しんでもらえた。「メディアからは断片的な情報しか得られない。一過性の情報に惑わされずに、冷静に見極めていけば、本質を理解することは難しくない」と力を込める。

ネット業界で存在感強める

 森岡さんが次に目指すのは、膨大なデータを有効に活用する「データテクノロジーカンパニー」として、業界で存在感を強めていくこと。広告だけでなく、インターネットを使ったあらゆるサービスが事業拡大の視野に入る。

 そのためには、経営者として社員をまとめる役割も重要だ。M&Aを経て誕生した会社には、さまざまな文化の社員がいる。「社長が自ら取り組む背中を見せてほしい」と期待するベンチャー志向の社員もいれば、「実務はみんなに任せてほしい」と言う社員もいる。「会社の今のステージに合った経営者はどうあるべきか」を模索しながら走っている。

 それと同時に、現場のリーダー層や若手には、自分が経験してきたように、冷静に本質を見極める訓練を積んでほしいと願っている。

 「米シリコンバレーのIT企業の働き方をまねする企業は多いですが、なぜ無償で食事を提供するのか、なぜ立って仕事をしているのか、理解しているのでしょうか。イメージだけで語っていませんか? じっくりと観察して背景を知るようにすれば、次の時代を予測することも難しくないはずです」

 インターネットを舞台に積み重ねた実績と経験を力に、さらなる飛躍に向けて助走スピードを上げている。

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