一方、Facebookで経験したように、既成概念にとらわれずに新しいサービスを広める挑戦を今も続けている。その1つが新規事業として取り組む「バーチャルリアリティー(VR)」だ。
VRは、視覚や聴覚などの五感を刺激して、仮想空間を現実のように感じられる環境を作り出す技術。すでに商品化されたり、イベントなどで活用されたりしている。Supershipが開発しているのは、離れた場所にいる複数の人が、同じ場所でスポーツ観戦などをしている感覚を味わえる技術だ。一緒に観戦している人と会話をすることもできるという。さまざまな企業や機関と連携し、実証実験を重ねている。
VRに対しても、「一過性」「長時間の利用は疲れる」「定着しない」という意見が根強く聞こえてくる。しかし、そういった意見に対して森岡さんは「VRのこと、本当に知っているの?」と疑問を投げかける。
実証実験では、2時間半映像を流し続けても、途中でやめることなく楽しんでもらえた。「メディアからは断片的な情報しか得られない。一過性の情報に惑わされずに、冷静に見極めていけば、本質を理解することは難しくない」と力を込める。
森岡さんが次に目指すのは、膨大なデータを有効に活用する「データテクノロジーカンパニー」として、業界で存在感を強めていくこと。広告だけでなく、インターネットを使ったあらゆるサービスが事業拡大の視野に入る。
そのためには、経営者として社員をまとめる役割も重要だ。M&Aを経て誕生した会社には、さまざまな文化の社員がいる。「社長が自ら取り組む背中を見せてほしい」と期待するベンチャー志向の社員もいれば、「実務はみんなに任せてほしい」と言う社員もいる。「会社の今のステージに合った経営者はどうあるべきか」を模索しながら走っている。
それと同時に、現場のリーダー層や若手には、自分が経験してきたように、冷静に本質を見極める訓練を積んでほしいと願っている。
「米シリコンバレーのIT企業の働き方をまねする企業は多いですが、なぜ無償で食事を提供するのか、なぜ立って仕事をしているのか、理解しているのでしょうか。イメージだけで語っていませんか? じっくりと観察して背景を知るようにすれば、次の時代を予測することも難しくないはずです」
インターネットを舞台に積み重ねた実績と経験を力に、さらなる飛躍に向けて助走スピードを上げている。
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