「どうぶつの森 ポケットキャンプ」 ファンが感じる「物足りなさ」操作性はマル。その一方で……

» 2017年11月23日 09時00分 公開
[青柳美帆子ITmedia]

 11月21日に配信開始したスマートフォン向けゲームアプリ「どうぶつの森 ポケットキャンプ」(ポケ森)。任天堂の人気シリーズ「どうぶつの森」最新作で、DeNAとの共同開発タイトルだ。接続エラー発生などの問題はあるものの、ダウンロードランキングでは日本、米国、英国で首位を獲得し、好調な滑り出しを見せている。

「どうぶつの森 ポケットキャンプ」は好調な滑り出し

 「どうぶつの森」シリーズは、とある村に引っ越してきた主人公(プレイヤーキャラ)が、住人の動物たちと交流を深めつつ、村での生活を楽しむというゲーム。自分の家のインテリアを充実させていくのが大きな目的になっている。ただし本作「ポケ森」は少し趣向が変わり、「キャンプ場の管理人」としてキャンプ場をにぎやかにしていき、キャンパーの動物たちを自分のキャンプに招くという流れだ。

 筆者のファーストインプレッションは「ちゃんと『どうぶつの森』だ!」。筆者はこれまでのシリーズのうちゲームキューブ版の「どうぶつの森+」(2001年発売)にハマり、学校と睡眠時間以外ほとんどを村での生活に費やしていたことがある。スマホゲームになることで一番の懸念点だった主人公の移動がきっちりスムーズで、住人たちの動きやグラフィックもしっかりしている。まだプレイ序盤のため全てのゲーム内要素を試してはいないが、ゆるーく楽しめている。

キャンプ場やキャンピングカーを充実させて楽しむ。だんだん動物が集まってくるとにぎやかに

 しかし、筆者はシリーズファンの中ではかなりライトな方。もっとコアなファンは「ポケ森」をどう見るのか。ニンテンドー3DS用ソフト「とびだせ どうぶつの森」(2012年発売)に熱中した過去を持つITmedia ビジネスオンライン編集長に聞いてみると、「非常に気軽にプレイできるタイトルになっていると思います」という。

 「これまでの『どうぶつの森』は、プレイし始めると『何をしていいのか分からない』ところがあった。自由度は高いが、一方で放り出された感じもある。本作はチュートリアルもきちんとあるし、ゲームプレイでやることがすごくはっきりしています。最初を乗り越える仕掛けをしっかり作っている印象がありますね」(編集長)

 筆者が感じていた操作性も「移動しやすいし、動物に話しかけやすい」と好評価。TwitterやFacebookとの連携が用意してあるのも便利だ。

ポケ森の「あと一歩のポイント」は?

 では、ファンが感じる「あと一歩の点」はどこか。

 「いいところの裏返しになるのですが、やるべきことの導線がしっかりしている分、いわゆる『おつかいクエスト』の繰り返しになってしまっているところがあります。家具を作るのも服や靴を購入するのも、動物たちのお願いに応えるという『おつかい』をしないと進まず、単純作業の繰り返しになりやすいかも」(編集長)

どうぶつたちのお願いに応えていくと、ゲーム内通貨や家具作りに必要なアイテムが手に入る

 その他に編集長が気にしているのが、自由度の低さ。「『どうぶつの森』シリーズの面白さの1つは、木や花を植えたり伐ったり、橋を作ったりして、自分だけの村を作っていく喜びにありました。今回は自分のキャンプ場とキャンピングカーはカスタマイズできますが、村全体を作り上げていくことはできません。ナンバリングタイトルほど『できること』の幅がないですね」という。

 ゲーム好きのねとらぼ副編集長も、「ここは虫取りをするエリア、ここは魚釣りができるエリア――と、エリアで細かく機能を分けた分、遊びやすくはなりました。反面、森で暮らすというよりは、必要に応じてエリアを移動して、必要なものを回収するゲームという感じになってますよね。もっと自由に魚釣ったりリンゴ育てたりしたかった……」と語る。

 筆者がやや不満なのは、シリーズおなじみの「借金」要素が薄くなったこと。自分の家を拡張するために背負った多額の借金を、虫や魚や果物といったアイテムを売りさばき、カブ取引をし、返済していくことが大きなモチベーションになっていた。ドンッと返済できたときはカタルシスすら感じた。本作もキャンピングカーなどに借金要素がないわけではないのだが、「もっとアコギに借金を背負わせてくれてもいいのでは……」と複雑な気持ちにさせられる。

キャンピングカーを大きくするにはローンを組む必要がある。ただし本作はとにかくゲーム内通貨の「ベル」が不足しがちなので、あまり借金要素を強くするとゲームの進行に支障が出るという判断かもしれない

「時短課金」効果は?

 ITmedia ビジネスオンラインはビジネスメディアなので、もう少しビジネスに関する話もしておかなくてはならない。「ポケ森」では、ゲームの進行を速くしたり、特別な家具の購入ができたりするゲーム内アイテム「リーフチケット」が課金要素となっている。だが筆者がプレイした印象では、少なくとも序盤では、課金の必要性や課金をしたくなる気持ちをそこまで強く感じることはなかった。

 日本ではiOSのセールスランキングがトップ10に食い込んだが、他国と比べると非常に珍しい傾向。先行して配信されたオーストラリアでは、ダウンロードランキングでは1位を獲得しているが、セールスランキングは最高76位(ゲームカテゴリーでは53位)と、カジュアルに遊ばれている。

11月22日のランキング(=Appgraphy)
国別セールスランキングの最高順位(=AppAnnie)

 「クリアのスピードを競うようなゲームでもないので、序盤ではほとんど課金する必要はないと感じます。ただ、日本ではスマホゲームに課金することに抵抗がないユーザーも多いので、セールスランキングでも健闘しているのかも。また、シリーズでおなじみのキャラ『とたけけ』『たぬきち』に関連する家具が欲しくて購入しているユーザーも少なくないと思います」(編集長)

 任天堂はこれまで、3本のスマホゲームをリリースしてきている。買い切り型の「Super Mario Run」、日本で一般的なガチャシステムを採用した「ファイアーエムブレム ヒーローズ」、そして時短課金型の「ポケ森」。それぞれのIP(知的財産)との相性も見ながら、さまざまなマネタイズのモデルを試している。

 「『どうぶつの森』の大きな魅力は、リアルタイムと連動していること。以前ハマっていた『ラブプラス』もそうですが、季節イベントを見ることが大きなプレイモチベーションになる。物足りない部分も感じますが、今後のアップデートや季節イベントを楽しみにしています」(編集長)

 年末年始にはクリスマスやお正月などの大型イベントが控える。そこでの盛り上がりが、タイトルの今後を決めるかもしれない。

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