スマートフォン向けゲーム「Fate/Grand Order(FGO)」が大ヒットしている。2015年の配信開始以降、破竹の勢いでプレイヤーを増やし、17年11月に1100万ダウンロードを突破。中国・韓国・北米にも展開している。売り上げも絶好調で、プロジェクトに携わるソニーの増益要因として名が挙がり、運営会社であるディライトワークスの業績も大きく伸びている。
「FGO」は、ゲームやアニメや漫画などで幅広く展開する「Fate」シリーズの中の一作だ。クリエイティブ集団「TYPE-MOON」が生み出した「Fate」シリーズは、アニメや漫画好きの層にとっては以前から有名だった。しかし「FGO」のヒットによって知名度が飛躍的に上がり、これまでに届いていない層にもリーチするようになった。
「『FGO』って最近よく聞くなあ。どうもものすごく人気らしい。でも『Fate』シリーズってなんだかよく分からないな」――そんな思いを抱いているビジネスパーソンも少なくないだろう。だが、「Fate」シリーズをはじめ、TYPE-MOONが生み出してきた作品は多岐にわたり、今から追いかけるのは難しい。
「Fate」シリーズを生み出したTYPE-MOONとはどういう集団なのか。なぜ「Fate」シリーズはこれほどまでに広がったのか。「FGO」の魅力とはなんなのか?――それらの問いに答えてくれる本が坂上秋成の「TYPE-MOONの軌跡」(星海社新書、税別960円)だ。
著者の坂上秋成は、TYPE-MOONが同人サークル(非商業のゲーム製作チーム)として初めて作ったゲーム「月姫」に感動して以降、作品を追いかけてきた。本書は、TYPE-MOONの中核であるクリエイター2人の出会いから、「FGO」がヒットしている現在まで、時系列順にTYPE-MOONの歴史と作品群を解説している。第7章「スマホゲームの可能性を探る『旅』――『Fate/Grand Order』」を読み終えたころには、「TYPE-MOONとは何者なのか?」の問いの答えがインストールされるはず。
本書は関係者への新規インタビューを踏まえて構成されているため、昔からのファンにとっても得られるものが多い(実は記者もTYPE-MOONファンなのだが、知らないことがたくさんあった)。特にTYPE-MOONの代表である武内崇による「TYPE-MOONらしさとは?」の答えには震えること間違いなしだ。
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