ホイッスルで世界に立ち向かう、「小さな会社」の勝算来週話題になるハナシ(4/5 ページ)

» 2017年11月30日 08時05分 公開
[藤井薫ITmedia]

メイド・イン・ジャパンのクオリティで勝負

 すでに説明したように、ホイッスルにはピーのあるタイプとないタイプがあるが、小柴製作所が製造するラグビーホイッスルはピーホイッスルだ。いい音色を生むためには、コルクのボール(ピー)も重要な要素となる。

 通常、コルクは多くの穴が空いているために、水分が染み込んで音が出ないなどのトラブルになることもある。同社では、コルクを防水加工することで、この穴を埋め込み、水分を吸収しにくいように仕上げているという。

 とはいえ、そんなにコルクの取り扱いが難しいのなら、コルクのないビートホイッスルにすればいいのでは、という指摘もありそうだが、どうもそんな単純な話ではない。

 というのも、ラグビーという激しい接触のあるスポーツでは、ホイッスルは単純にプレーを止めるためだけでなく、重傷事故などを未然に防ぐ重大な役割を担っている。「ホイッスルが聞こえない!」という事態は、選手の大ケガに直結する可能性があり、決して起こってはならないのだ。

 さらにラグビーでは、高めの音の一本調子ではなく、興奮状態の選手たちの心の奥底に響くような、低めの力強い音色が必要になる。ピーホイッスルは、音に強弱がつけやすく、審判の意志と表現力を伝えやすいため、試合をコントロールしやすいのだという。

 また、クリアな響きを実現するために、ホイッスルのボディにもこだわっている。しんちゅうをベースに銅、ニッケル、金(またはクローム)の厚手メッキを施した4層構造の硬質なボディを作りあげ、これによって、品質の劣化が少ないだけでなく、表面も美しい鏡面仕上げになっている。

 世界の強力なメーカーたちと対峙するには、こうした細部にまで気を配ったメイド・イン・ジャパンのクオリティで勝負するしかないということだろう。

2015年度ラグビーワールドカップ決勝戦で、審判が使ったモデル。アクメ社の「ACM-58」

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