「口裂け女」を岐阜のアイドルにした、地元経営者の“本気”商店街に活気を(4/5 ページ)

» 2018年01月09日 07時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]

「記憶に残る」ことが将来につながる

 商店街に人が増えたといっても、お化け屋敷は夏限定のイベント。一過性の話題づくりにすぎないのでは? という疑問もある。

 それに対して吉村さんは、「柳ケ瀬で口裂け女が出るお化け屋敷に行った、という記憶が残ることが重要なんです」と強調する。

 人がどれだけ来るか、という短期的な視点ではない。「怖かった」という“楽しい思い出”が残ることで、大人になっても消えることのない、柳ケ瀬への愛着が育つと考えているのだ。

 それは自身の子どものころの記憶と重なる。にぎわう柳ケ瀬で、子ども時代、青春時代にさまざまな経験をした。それがあるからこそ、いま「柳ケ瀬のために」と行動を起こすことができる。いくら地元といっても、足を運ばなければ記憶に残らない。何の思い出もなければ、子どもたちが大人になったとき、柳ケ瀬に対して何か思いを持つことはないだろう。そして、地域の文化や伝統は失われていく。

 「子どもたちの記憶に残る柳ケ瀬にする。それがお化け屋敷の一番の効果なのです」

 お化け屋敷は有志による取り組みであることから、メンバー個々の状況が開催に大きく影響する。17年は準備ができる状況になく、5月の時点で休催を決めた。

 しかし、子どもたちは口裂け女を待っている。その期待をひしひしと感じていた吉村さんらは、8月13、14日の2日間限定イベント「恐怖の夏祭り」の開催を決めた。柳ケ瀬商店街に隣接する神社を会場に、肝試しを中心とした催しを開催。もちろん口裂け女が主役だ。

 肝試しのほか、世界中の妖怪が口裂け女と戦う「妖怪プロレスワールドカップ」、口裂け女やゾンビが突然踊りだすフラッシュモブなどのイベントを実施。また、「口裂け女になれる」メーク体験や写真撮影、コンテストなど、体験企画も用意した。JAの協力でスイカやトマトなどもふるまい、口が裂けた人たちがスイカにかぶりつく姿もあった。まさに「お祭り」だ。肝試しには2日間で約1300人が入場した。

photo 2017年8月に開催した「恐怖の夏祭り」

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