韓国の米国大使がいつまでも就任しない理由とは世界を読み解くニュース・サロン(2/4 ページ)

» 2018年01月25日 07時37分 公開
[山田敏弘ITmedia]

政府内部の重要役職も空席が多い

 空きだらけなのは大使のポジションだけではない。政府内部の重要役職もかなり空席が多いのだが、どれほどのポジションが空いているのか。米政府の重要ポジションである633ポストのうち、4割ほどしか決まっていない。さらにこれまでのどの政権よりも、離職者の数が多いとも報じられている。しかも、空いているポジションに指名されて辞退する人も少なくない。筆者が政府機関の関係者から聞いたところによれば、「現在のところ空きになっているポジションは省庁のベテラン職員が一時的に代理をしているケースが多い」という。

 ちなみに、北朝鮮問題で重要になる日本や中国、北朝鮮など東アジアを管轄する東アジア・太平洋担当の国務次官補も最近まで正式に決まっていなかった。17年12月にやっとキャリア外交官のスーザン・ソーントンがその要職に指名された。また国防総省のアジア太平洋問題担当次官補も、12月になって著名なアジア専門家ランディ・シュライバーが任命されたばかりだ。

 米国では要職に就くのに議会の承認がいる。つまり、指名されても議会の承認が進まないケースもあるため、一概にトランプ政権が悪いとは言えない。しかし、米国が重要視する地域では、何をおいても人選から承認まで迅速に行うべきで、1年以上も大使が決まらないという事態は異常だと言っていい。

 事実、米国国内では北朝鮮の核ミサイル問題で、韓国国内や朝鮮半島の空気感などをつぶさに感じ取る必要があるこの時期に、大使がいないのはいかがなものかという指摘がある。

 駐韓米大使のような要職がいつまでも空席になっている背景には何があるのか。

 実は、8月ごろからずっと駐韓米国大使に目されてきた人はいる。米ジョージタウン大学のビクター・チャ教授だ。チャ氏は、ジョージ・W・ブッシュ政権で北朝鮮の核問題を議論する6カ国協議の次席代表を務めた人物で、米国きっての朝鮮半島問題の専門家だ。

 政府関係者の話によると、チャ教授はすでにホワイトハウスに顔を出しており、高官らともあいさつを済ましているとのことだったが、話は進展しないままだった。そして17年12月、ついにチャ氏が駐韓米大使に任命されたと大々的に報じられた。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.