「原画の貸し出しを無料にして、さまざまなところで原画展を開いてもらいました。そうしたらすごく売れた。つまり、『プペル』は絵本として売れたわけではなく、原画展のお土産として売れたわけです。『プペル』は書店やWeb書店でも購入できますが、本丸は個展会場でした」
「プペル」の実験は売り場以外にもあった。「分業制」と「クラウドファンディング」だ。絵本というと個人が作っているイメージがあるが、西野さんはチーム制で制作した。「市場が小さくて売り上げが見込めないので、分業制を実現する制作費が確保できない」という課題を解決するために、クラウドファンディングで制作資金を募り、5600万円が集まった。
「ただ言っておきたいのは、クラウドファンディングは『金のなる木』ではないということ。テレビタレントがクラウドファンディングに挑戦して失敗した例はいくらでもあります。『お金とは何か?』『クラウドファンディングとは何か?』が分からないと勝つことはできない。お金とは信用を数値化したものであり、クラウドファンディングとは信用をお金に両替する両替機です」
クラウドファンディングだけではなく、17年に話題になった「VALU」やオンラインサロン、専門家の時間を売買するサービス「Timebank」も同じという。「信用持ちは現代の錬金術師」と西野さんは語る。
「信用を築くためにはウソをついてはいけない。例えばグルメ番組でおいしくないものをおいしいと言ったらもうダメ。ベッキーはグルメ番組やバラエティーでいいコメントしかしていなかったから、認知はあっても信用はなかった。でもベッキーを擁護すると、ウソをつかざるを得ない環境にいると空気を読んでウソをついてしまうんです。僕は信用を重ねたいと思ったときに、スケジュール帳を開いて、ウソをつかなきゃいけない仕事を全部断りました」
そうは言っても社会ではウソをつく必要があるのでは――そんな就活生からの質問を西野さんは否定する。「ウソをつかない環境を選びましょう。そういう意味でもパラレルキャリアは重要。僕は絵本作家やお笑い芸人といった複数の仕事をやっていて、1つを辞めても違う方で食っていける。だからこそ対等になれるんです」。
日本は「仕事への熱意(やる気)がある社員」が6%と低く、139カ国中132位と最下位クラスという調査がある(米ギャラップ調べ、2017年)。無気力な同僚や、命令しかしない上司の中にいるうちに、仕事へのやる気がなくなっていくビジネスパーソンが多いという。
「自分がブランドになることが重要です。会社の名前ではなく、自分の名前がブランドになれば、会社に合わなくても違う場所に行くことができる。顔を出して自分のキャラクターを発信することがリスクヘッジになります。企業の外にいても強いし、中でも重宝されるようになりますよ」
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