厚労省が「裁量労働制データ捏造」に走った根本的な理由スピン経済の歩き方(1/5 ページ)

» 2018年02月27日 08時00分 公開
[窪田順生ITmedia]

 厚生労働省の「データ捏造(ねつぞう)」で安倍政権が炎上している。

 裁量労働制の労働者が一般の労働者より残業時間が少ないという厚労省のデータが、実は不自然に操作したものであることが明らかになり、それを用いて答弁をした安倍首相や閣僚が野党から厳しい突き上げをくらっているのだ。

 加藤勝信厚労相は「わざとじゃない」と釈明をするが、調査対象となっている1万1575の事業所のなかで、現時点で少なくとも93事業所のデータに異常な数値があることが分かっている。意図的でないなら、厚労省が出しているさまざまな調査・統計をすべて疑ってかからねばならないほどの惨状だ。

 1年近く続いた野党の森友・加計学園問題の「疑惑」追及キャンペーンにへきえきしていらっしゃる方などは、「どうせまたいつもの揚げ足とりかよ」という印象を抱くかもしれないが、残念ながら今回はそういうレベルを超越した深刻さがある。

 国民の生命にダイレクトに関わってくるインチキだからだ。

 よく批判されているように、今回の裁量労働制の対象拡大は、経営者側に「定額働かせ放題」というお得なプランが増えるだけになってしまう可能性が高い。重いノルマを課した社員に対して、面倒臭い労務管理をすることなく、「あなたの裁量内で結果を出してね」の一言で延々と働かせることができるようになるからだ。

 そういう厳しい競争環境をつくれば、仕事をやらないのに定年まで会社にしがみつこうとする「正社員主義者」が自然と肩身が狭くなるので、雇用の流動性を高められるという狙いなのかもしれないが、「相性の悪い会社はサクサク辞めていくのが当たり前」という労働文化が醸成されなければ、単に「合法的ブラック企業」がのさばる結果しか生まない。

 こういう欠陥のある政策がインチキな現状把握調査を基に進められている可能性がある、というだけでも大問題なわけだが、今回がより深刻なのは、「捏造データ」に森友学園問題における財務省と同様に「忖度」の影がちらついていることだ。

厚生労働省の「データ捏造」で安倍政権が炎上
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