厚生労働省の「データ捏造(ねつぞう)」で安倍政権が炎上している。
裁量労働制の労働者が一般の労働者より残業時間が少ないという厚労省のデータが、実は不自然に操作したものであることが明らかになり、それを用いて答弁をした安倍首相や閣僚が野党から厳しい突き上げをくらっているのだ。
加藤勝信厚労相は「わざとじゃない」と釈明をするが、調査対象となっている1万1575の事業所のなかで、現時点で少なくとも93事業所のデータに異常な数値があることが分かっている。意図的でないなら、厚労省が出しているさまざまな調査・統計をすべて疑ってかからねばならないほどの惨状だ。
1年近く続いた野党の森友・加計学園問題の「疑惑」追及キャンペーンにへきえきしていらっしゃる方などは、「どうせまたいつもの揚げ足とりかよ」という印象を抱くかもしれないが、残念ながら今回はそういうレベルを超越した深刻さがある。
国民の生命にダイレクトに関わってくるインチキだからだ。
よく批判されているように、今回の裁量労働制の対象拡大は、経営者側に「定額働かせ放題」というお得なプランが増えるだけになってしまう可能性が高い。重いノルマを課した社員に対して、面倒臭い労務管理をすることなく、「あなたの裁量内で結果を出してね」の一言で延々と働かせることができるようになるからだ。
そういう厳しい競争環境をつくれば、仕事をやらないのに定年まで会社にしがみつこうとする「正社員主義者」が自然と肩身が狭くなるので、雇用の流動性を高められるという狙いなのかもしれないが、「相性の悪い会社はサクサク辞めていくのが当たり前」という労働文化が醸成されなければ、単に「合法的ブラック企業」がのさばる結果しか生まない。
こういう欠陥のある政策がインチキな現状把握調査を基に進められている可能性がある、というだけでも大問題なわけだが、今回がより深刻なのは、「捏造データ」に森友学園問題における財務省と同様に「忖度」の影がちらついていることだ。
大東建託が「ブラック企業」と呼ばれそうな、これだけの理由
電通や東芝といった大企業が、「軍隊化」してしまうワケ
モスバーガーが「創業以来の絶不調」である、もうひとつの理由
日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
なぜ日本のおじさんは怒ると「責任者を呼べ!」と騒ぐのか
「ウィルキンソン」がバカ売れしている本当の理由
「石原さとみの眉が細くなったら日本は危ない」は本当か
「着物業界」が衰退したのはなぜか? 「伝統と書いてボッタクリと読む」世界Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング