今では消費者の目線で営業活動している日柳さんだが、駆け出しのころはこの視点が欠けていて苦労したという。
鍋料理に使われることが多いキノコ類は、一般的に冬場に売れる商品だ。この時期にスーパーに行くと、野菜コーナーの目立つ位置に数多くのキノコ商品が陳列されている光景を目にすることがあるはずだ。一方、夏場はあまり売れないため、スーパーでも奥に追いやられてしまう。
「冬場は思いのほか売れるのですが、夏場は何かしらアクションしないと売れません。今でも苦労の連続です」と日柳さんは苦笑するが、過去にこんなエピソードがあった。
冬にブナシメジが98円、あるいは128円でも飛ぶように売れたので、夏場に98円でスーパーのバイヤーに提案したところ、「こんな暑いときに、たとえ98円でも誰も買わないよ。78円でやろう」となった。とにかく売り上げを求めた日柳さんはそのまま商談を進め、実際に78円で販売した。次も78円で提案すると「もういらない」と言われた。理由はまったく売れていなかったからだ。
「値段が安ければきっと買うだろうと思っていたのですが、まるで消費者を見ていませんでした。彼らはただ安いから買うのではないのです。当時はバイヤーとの商談にほぼ100%力を入れていて、自分自身もモノさえ売れればいいやという感覚でした。モノを買っていく消費者をイメージしていなかったのです」
結果、取引先から2回目の注文は来なくなり、営業成績は伸び悩んだ。
そんなさなか、ある大手スーパーのバイヤーに言われたことが転機になった。「売れる企画を持ってきてよ」。
価格を訴求してチラシに乗せるようなやり方ではなく、キノコを使ったメニュー提案や、目を引く売り場作りなど、消費者のニーズに応える方法が、本当の売れる企画なのだと日柳さんはそのとき気付かされたのだ。
それ以来、売れる企画を常にストックしておくべく、毎日のように新しい企画を考えるようになった。そのために市場動向や取引先の売り上げデータ、天候、野菜の相場など、ありとあらゆる情報を集め、企画作りの判断材料にしたのだ。現在もチームメンバーと企画のアイデア会議を頻繁に行っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR注目記事ランキング