激戦のEC事業に参入したJR西が頼るあの企業勝算がなかったわけではない

» 2018年03月01日 15時37分 公開
[昆清徳ITmedia]

 JR西日本は2月26日から産地直送の電子商取引(EC)サイト「EVERYTHING FROM.JP market」を立ち上げた。西日本だけでなく全国のこだわりの食品を販売する。同社は2017年5月から海外向けのECサイト「EVERYTHING FROM.JP」を運営しているが、今回は国内向けのECサイトとなる。

 JR西は2013年に発表した中期経営計画で「地域共生企業」となることを掲げている。同社広報担当者は「地域ならではの逸品を発掘して世の中に広めることが目標」と説明する。目標となる売り上げやECサイトの評価指数については非公表。「具体的な売り上げ目標は大事だが、社会貢献的な意味合いが強い」(広報担当者)

 EC事業者には楽天などの競合がひしめく。いくら社会貢献的な意味合いが強いといってもある程度の勝算がないと事業化には踏み出さないだろう。ECに不慣れな鉄道事業者が短期間で次々とサイトを立ち上げて運営するに至った背景は何なのだろうか。

photo EVERYTHING FROM .JP marketの画面(出所:公式Webサイト)

実際の業務を担うのはあの通販会社

 2つのECサイトを実質的に運営しているのは通販大手のフェリシモだ。基本的な事業の方針はJR西が決定する。フェリシモはその方針に沿って販売する商品の選定、商品の撮影、ウェブへの掲載、広告・宣伝、受注、商品の発送まで丸ごと運営を担う。通販やEC事業で培ったノウハウを提供している形だ。

 同社は2015年頃から自社の事業で培ったインフラ・プラットフォームを利用したビジネスを本格化させている。JR西のようにECを丸ごと運営するのは例外だ。案件の多くはカタログ製作代行、サイト構築、商品撮影、販売、出荷代行、店舗納品、顧客対応など一部の業務を支援するものだ。クライアント企業にはアパレル商社やコスメ関連メーカーなどがいる。「競合他社でこういったサービスを提供している話はほとんど聞かない」(業界関係者)という証言もあるように、ここまで多岐にわたって手掛けているのは珍しいケースだろう。

 事業が伸びている背景についてフェリシモの古村和明CFV事業本部ファッション事業部部長は「当社のオリジナル商品を開発する力や自動倉庫といったインフラ面などが他社に評価されている」と説明する。また、JR西のようなクライアントから引き合いがくる背景については「自前でECサイトを運営するのはとても難しい。ノウハウのある我々に頼んでみようかとなるのではないか」と分析した。

 自社商品を海外や国内に販売する際、商品数が少ないならばアマゾンなどを通して販売すればよい。だが、ある程度の品ぞろえがあり独自の世界観を消費者に提示したいと考えたときにはECサイト運営は1つの選択肢になりうる。ただ、ゼロから立ち上げるのには多大な労力がかかる。

 こういった潜在的なニーズを今後もくみ取ることができればフェリシモの新ビジネスは金のなる木に成長するかもしれない。

photo 取り扱う商品の一例

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