もはや飛行機は路線バスに 超大型旅客機が消滅の危機“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2018年03月15日 08時00分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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空の旅を楽しむことはもはや不可能

 1960年代までは、空の旅は高嶺の花であり、誰もが気軽に利用できるサービスではなかった。こうした状況を変えるきっかけになったのが、超大型機ボーイング747の登場である。

 同機の特徴は何と言ってもその機体の大きさにある。エコノミー席で横10列(間に通路が2本)という配置ができる機体(ワイドボディ機)は当時存在しておらず、最大で500人以上の乗客を運べるという圧倒的な輸送能力によって大量航空輸送時代を切り開いた。

 安価に海外旅行が実現できるようになったのも、1人あたりのコストが安いジャンボのような機体が登場したおかげといってよい。

 だが、超大型機によって航空輸送がメジャーな存在となり、想像を超えるペースで市場が拡大。結果として超大型機を引退寸前に追いやる状況となってしまったわけだ。

 航空機は機体が大きければ大きいほど、機内の騒音は少なくなり、閉塞感や圧迫感も減少する。ジャンボやA380といった超大型機は、圧倒的な客室スペースを使って充実した機内サービスを実現でき、しかも静粛性が高いことから、一部の顧客からは熱烈に支持されてきた。

 しかし航空機は路線バスと同じ存在となり、効率が最優先される時代となった。この流れは加速することはあっても、後戻りはしないだろう。一部の航空会社は、さらに乗客を詰め込むため、事実上の「立ち席」の導入まで検討しているという。ゆっくりと空の旅を楽しむ時代は、もはや過去のものとなったのかもしれない。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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