マックは原田泳幸前CEO(最高経営責任者)の時代、全店売上高が5000億円を突破するなど、拡大路線を追求してきた。結果的に店舗運営に無理が生じ、業績低迷の一因となったが、同社の戦略は常に規模の拡大である。
一方、モスからはそのような雰囲気は感じられない。モスの客単価は推定で1057円、マックの客単価は570円とモスの方が圧倒的に高い。来店する顧客の年齢層もモスの方が高めとなっている。
しかしながら、ハンバーガー店というものが、そもそも若い年齢層の顧客を対象としている以上、年齢が高めとはいえ、モスの顧客もやはり若年層が中心となる。
00年から17年の間に「15歳以上、40歳未満」の人口は約22%減少したが、モスの客単価はほとんど変わっていない。つまり顧客のターゲット層は大きく変わっていないため、人口減少に合わせて店舗の事業規模を縮小してきたと言えなくもないだろう。悪く言えば成長できない企業だが、時代の流れに逆らわない堅実な戦略であるとも言える。
【訂正:2018年3月22日13時38分】初出で全店売上高とありましたが、これはハンバーガー事業のみを示すものではないため該当箇所を変更しました。
上場企業として投資家の要求を満たしているのかという話は別にして、モスがこうした経営を行っているのは、同じハンバーガー店と言ってもマックとモスとでは、経営学上の位置付けがまるで異なるからである。
マックは基本的にマスをターゲットにしており、売上高を拡大する方向性で経営を進めてきた。常にトップシェアを維持することが重要であり、企業規模もモスと比較すると圧倒的に大きい。こうした企業は、通常「コスト優位の戦略」を採用するケースが多い。
コスト優位の戦略は、大量生産・大量販売などによるコストメリットを生かし、競合他社より安いコストで製品を提供し、市場の支配権を確立するという手法である。ハンバーガー店におけるマックの地位は圧倒的なので、マックが低価格な商品でシェアを維持していれば、ここに正面から勝負を挑む企業はなかなか現れない。
この戦略は企業体力のある先行者にとって有利になる。アパレルの業界では、ユニクロが典型的なコスト優位戦略を採用する企業である。
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