攻める総務

なぜ「ペット同伴OK」のオフィスがうまくいっているのか犬や猫と一緒に出勤(3/3 ページ)

» 2018年03月29日 11時00分 公開
[加納由希絵ITmedia]
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「歩み寄る」ことができる職場に

 「トラブルや手間を避けるために『やらない』と判断することは簡単です。ですが、お互いの事情を理解して『歩み寄る』ことが大切だと考えています」と中村さんは強調する。

 「家にペットがいる」「動物が苦手」などに限らず、人はさまざまな事情を抱えて働いている。育児や介護によって勤務時間が制限される人も、病気を抱えている人もいるかもしれない。お互いを理解し合いながら働くことの一環として、ペット同伴出勤の制度があるのだ。

 「犬がほえてしまうことも、全くないわけではありません。だったら連れてこない方が良いのでしょうか? お客さまとの電話中に鳴き声が聞こえてしまったら、会社の取り組みや特長を説明するきっかけになります。ネガティブに捉えるだけではなく、ポジティブに考えることで、さまざまな事情を受け入れられるようになるのではないでしょうか」(中村さん)

 社員に気持ちの変化が生まれた事例もある。菓子事業を担当していたある男性社員は「犬が苦手」と公言し、犬には近寄らないようにしていた。ところが、あるとき、同じチームの女性社員が小型犬を連れてくるようになったことで状況が変わった。「飼い主のことをよく知っている」「しっかりとしつけされている」という安心感から、徐々に犬がいる空間に慣れてきたのだ。最終的には、「リードを持てるようになった」と喜んでいたという。

 事情を理解しながらも、関わり合いを持たずに働くこともできる。しかし、少し環境や行動が変わることで、お互いの理解が深まっただけでなく、苦手なものを少しずつ克服する、新たな自分も発見できた。

 「個人を尊重する」という考え方は、他の制度にも表れている。マースジャパンには、全社員対象の在宅勤務制度がある。4週間のうち4日、自宅で仕事ができる。子どもなど、家族の事情がある人だけでなく、全社員を対象とするため、「家事がたまっている」「1人で作業に集中したい」などの理由で在宅勤務をすることも可能。ライフスタイルに応じた働き方ができる。

 オフィスにいる全ての人が満足できる環境や働き方を実現することは難しい。状況に応じて個人の事情を尊重し合うことが、働きやすさにつながる。「ペットがいるオフィス」は、会社の事業を表現したものであるとともに、お互いに歩み寄る姿勢を表した取り組みだった。

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