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» 2018年04月10日 07時52分 公開

スピン経済の歩き方:真面目な組織人ほど「うそ」や「不正」に走りやすい理由 (3/5)

[窪田順生,ITmedia]

組織内ルールが「思考」に勝ってしまった

日本相撲協会が悪目立ちしている

 アーレントの問題提起から50年以上が経過したが、この真面目な組織人が、真面目さゆえに引き起こす「陳腐な悪」という問題を、我々日本社会はまだ克服できていない。というより、終身雇用制度の弊害でよりおかしな方向へとこじらせている。

 その症状が重くなって、いよいよ覆い隠せなくなってきたのが、日本相撲協会なのだ。

 ご存じのようにこの組織に身を投じた者は、「伝統」や「しきたり」を重んじなくてはいけない。それは言い方を変えると、古くから続いているルールは問答無用で守る、としつけられるということなので、他の組織より思考停止に陥りやすい。つまり、「プチ・アイヒマン」とも言うべき、思考停止に陥った人々があふれているのだ。

 相撲界の発展のために尽力している真面目な人たちをナチスの戦争犯罪人と重ねるなんて侮辱だと相撲ファンからこれまたすさまじい抗議が殺到しそうだが、残念ながら今回の救命処置騒動が、協会の思考停止体質をこれ以上ないほど分かりやすく示している。

 若い行司の方は、頭に刷り込まれている「女人禁制」というルールや、周囲の相撲ファンからの指摘で脊髄反射でアナウンスしてしまった。もし彼がアイヒマンのように社会からつるし上げられるようなことがあれば、きっとこう釈明するはずだ。

 「伝統に従っただけだ」

 組織人としては真面目だが、「倒れている人をどう救えるのか」ということに関してはまったく思考を巡らせていない。

 組織内ルールが「思考」に勝ってしまったのだ。また、このような思考停止は、トイレ発言が叩かれている春日野巡業部長にもあてはまる。

 問題のアナウンスがなされたとき、トイレに行っていて会場にはいなかったとして、「想定外の出来事でビックリした。(アナウンスも)聞こえなかった」(日刊スポーツ 4月5日)とコメントした春日野親方だったが、その後、騒動時に画像から会場内にいたことが明らかになった。

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