伊藤忠がファミマを子会社化、商社とコンビニの微妙な関係とは?“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2018年04月23日 07時30分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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伊藤忠の業績はコンビニ事業に依存している

 ファミマは16年にサークルKサンクスとの経営統合を実施しており、店舗数ではトップのセブンに迫ろうとしている。だが、店舗の収益力ではセブンに水をあけられた状態であり、現状のままでセブンに追いつくことは難しい。同社は伊藤忠との連携を強化し、アプリを使った金融サービスへの進出など、新しい施策を打ち出そうとしている。

 子会社になれば伊藤忠が持つリソースをフル活用できるので、新サービスの立ち上げもよりスピーディになるだろう。その意味では子会社化することのメリットは大きいと言えるかもしれない。

 だが一方で、小売店というビジネスの本質を考えた場合、商社による子会社化にはどうしても不安が残る。伊藤忠ではコンビニを含む食品部門が稼ぎ頭となっており、コンビニは同社にとって魅力的な存在だが、ファミマの株主にとってはそうとは限らない。

 ファミマは現在、経営統合に伴う店舗の統廃合を進めており、今年度中にはそれが一巡する。店舗のスリム化の効果もあり、今期決算は大幅な増益が見込まれている。だが、来期以降の業績については、子会社化の効果がどの程度なのかによって大きく変わってくるはずだ。

 伊藤忠がファミマに初めて出資した際、ほぼ同時期に伊藤忠の社長に就任した丹羽宇一郎氏は、ファミマの独立性を保つため、伊藤忠の社員に対して、取引先を無理に伊藤忠に変えるような営業はしないようクギを刺していたと言われる。

 小売店と商社という利益相反の構図を、シナジー効果によって打ち消すことができるのか。伊藤忠とファミマ、両社経営陣の手腕が試されている。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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