71億円の減益ながら表情の明るいホンダ池田直渡「週刊モータージャーナル」(1/3 ページ)

» 2018年05月07日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 4月27日。ホンダ技研工業の決算発表会が開催された。最も重要な指標である営業利益は8335億円で、前年度に比べて71億円のダウンとなった。しかし会見に現れた倉石誠司副社長の表情は明るい。質疑応答では笑顔を見せる局面もあった。

ホンダの2017年度通期決算は、売上高15兆3611億円(前年比9.7%増)、営業利益8335億円(同0.9%減)だった ホンダの2017年度通期決算は、売上高15兆3611億円(前年比9.7%増)、営業利益8335億円(同0.9%減)だった

売れているのに営業利益がダウンしている

 今回はその理由とホンダの状況を見ていこう。そもそもホンダに限らず一般論として、営業利益とはざっくり言って本業の利益のことだ。仮にトータルでは多少赤字決算だとしても、営業利益の数字さえ大丈夫なら「もうかる仕組み」そのものは温存されているわけで、リストラなり何なりでマイナス要因を切除していけば健全になれる可能性が高い。逆に営業利益がマイナスなら再生の望みは薄い。

 だからこそ営業利益は大事なのだ。その営業利益が昨年対比で減少している、と大げさに書いているが、17年度の営業利益は8335億円であり、71億円は一見大きく見えるが、比率にすると1%以下で影響は小さい。連結販売台数で見ても二輪事業がプラス15.3%。四輪事業がプラス0.2%。パワープロダクツ(耕運機やポンプなどの汎用製品)がプラス2.3%と製品はむしろ売れていることが分かる。二輪、四輪とも過去最高の販売台数となっている。

二輪、四輪とも販売台数は過去最高に 二輪、四輪とも販売台数は過去最高に

 製品が売れているのに一体なぜ利益が減少するのかと言えば、コストが増えたからだ。当年度は新型車の投入が多く発売キャンペーンなどの販促費負担が増えたとホンダは説明するが、これは過去最高販売台数を叩き出すために販売的に無理があったのかもしれない。製品のポテンシャルが高ければそんなに販促費に依存しなくても良いはずで、厳しい言い方をすれば実力以上に売るために消耗している部分があるとも言える。次年度は今年度以上の台数をより少ない販促費で達成していく工夫が求められる。

 もう1つはここ数年ホンダの利益のアシを引っ張り続けているタカタのエアバッグ関連の集団訴訟和解金の負担。年金制度改定に要した費用。この和解金と年金改定費用についてはあくまでも当年度に固有の問題なのでさほど気にする必要はないだろう。

 だが、気になる点がもう1つある。グローバルな人件費の高騰によるものだ。これは単年度で済む話ではなく、今後ずっと付きまとう可能性が高い。

 こうしたいくつかの要因が941億円の実質増益を吹き飛ばしてしまったことになる。深刻な事態とは言わないが、一過性と涼しい顔をしていられる話でもないように思う。

 営業利益外で、決算にプラスに働いた当年度固有の要素として触れておかなくてはならないのが米国の法人税率引き下げで、これは3461億円も当期利益を押し上げている。

 全体としてみると、昨年まで「来年はタカタ問題が解決するので利益がばっちり出ます」と言っていたほどピカピカの成績にはならなかった面はあるが、業績そのものはまずまず好調と言えるだろう。ただし不安要素はないわけではない。

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