ベンチャーを取り巻く環境を表す言葉として、よく「生態系(エコシステム)※4」という言葉が使われる。活力あるベンチャー、イノベーションを生み出すためには、この生態系(エコシステム)が厚みを持つことが重要である。動植物で溢れる豊かな森林の生態系のように、大学や研究機関、自治体、金融機関、ベンチャー・キャピタル、事業会社等が共存共栄し、次々とベンチャー・イノベーションが芽吹くことが理想だ。豊かな生態系では、夢破れたベンチャーも、その経験・人材等は新しい芽を生む種・養分となる。数少ないベンチャーを大事に守り育てるのも大事だが、次々とベンチャー・イノベーションが生まれる(良い意味での)多産多死の環境を作ることが重要だ。
地方都市は、一般に大都市と比べるとヒト・モノ・カネが集まりづらく、生態系(エコシステム)に厚みを持たせるには一層の工夫が必要である。鶴岡市の事例では地方自治体や、地元の企業や金融機関の取組みも当然大きかったが、慶應義塾大学や、上述のバイオベンチャーの創業期から成長を支えた域外のベンチャー・キャピタル等、外部の力をうまく活用し取り込めたことも忘れてはならない。
人口減少という課題に直面する地方都市が多い中、ベンチャーやイノベーションを通じた地方創生への期待も大きい。豊かなベンチャー生態系(エコシステム)を持つ、魅力溢れる地方都市が増えていくことを期待している。
※3 フィデアホールディングス株式会社 平成29年3月期決算説明会資料より
※4 「ベンチャー・チャレンジ 2020」(2016年4月日本経済再生本部決定)では、「ベンチャー・エコシステムとは、起業家、既存企業、大学、研究機関、金融機関、公的機関等の構成主体が共存共栄し、企業の創出、成長、成熟、再生の過程が循環する仕組み(生態系)である」とされている。
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