あなたはカローラの劇的な変貌を信じるか?池田直渡「週刊モータージャーナル」(4/4 ページ)

» 2018年06月04日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]
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 富士スピードウェイの東コース最大の難所は、Rが大きくなりながら、つまり加速しながら上る坂の頂点で一度右に巻き込み、直後に左に直角に曲がらなくてはならないコーナーだ。大きな遠心力を受けつつ上り坂頂点でタイヤ荷重が抜け、すぐに逆方向へ切り替えさねばならない。この厳しい場所で、カローラ・ハッチバックは横っ飛びになりながらも姿勢を崩さず、すぐさまの切り返しに答えてみせる。シャシー剛性の高さが感じ取れた。ハッチバックというリヤ剛性にハンデを持つボディ形状でこれができるのは立派だ。また、急減速Gを与えながら折り返す最終コーナーで、リヤが連続的にキレイに滑るのも特徴的だ。剛性が出ていなければ滑り方は断続的になる。

 サーキットで分かるのはこういう高負荷の領域だけであり、クルマに求められる多くの性能の中で限定的な部分だ。本当は普通の道を普通に走ってみないと断言はできないが、その高いポテンシャルの片鱗は感じ取れた。恐らく相当良いだろうと思う。マツダやスバルのように、作り手もユーザーも「ウチの走りはトヨタとは違う」と思っている人たちがうかうかしていられないクルマに仕上がっているのではないだろうか。

 5ドアハッチバックという高い実用性を持つボディに加え、刷新された新世代の運転支援が搭載される。わずか1ルクスの暗所でも衝突安全ブレーキが機能し、また前走車追従のアダプティブレーダークルーズと車線の中央をキープできるレーントレーシングアシストも搭載される。

詳細な内容は未発表ながら、本格的なコネクティッドとしてデビューするカローラにとって重要になるであろうマルチディスプレイ 詳細な内容は未発表ながら、本格的なコネクティッドとしてデビューするカローラにとって重要になるであろうマルチディスプレイ

 万能選手と言っていいこのカローラハッチバックだが、一番の心配はそもそもCセグメントハッチバックというマーケットが国内にはもうほとんど存在していないことだ。とはいえ、グローバルで見たときには最も売れるクラスであり、自動車の中心的クラスでもある。カローラがこういう仕上がりなら、まもなく登場するクラウンも期待できるだろう。もしそれがこれからのトヨタのスタンダードになるとしたら、ちょっと恐ろしい。世界の自動車のスタンダードが書き換えられてしまう。もしかしたらわれわれは自動車の新たな1ページに立ち会っているのかもしれない。今は量産モデルの公道試乗がひたすら楽しみである。

筆者プロフィール:池田直渡(いけだなおと)

 1965年神奈川県生まれ。1988年企画室ネコ(現ネコ・パブリッシング)入社。取次営業、自動車雑誌(カー・マガジン、オートメンテナンス、オートカー・ジャパン)の編集、イベント事業などを担当。2006年に退社後スパイス コミニケーションズでビジネスニュースサイト「PRONWEB Watch」編集長に就任。2008年に退社。

 現在は編集プロダクション、グラニテを設立し、自動車評論家沢村慎太朗と森慶太による自動車メールマガジン「モータージャーナル」を運営中。

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