制度設計側では「古いクルマは環境負荷が高いからエコカーへの乗り換えを促進しよう」という大義名分を掲げるが、仮にそれを正論としても、罰則で誘導できるのは、しぶしぶでもその負担を許容できる場合に限る。今や先進国の中で異例なほど人件費が安くなった日本では、ない袖は振れないところへ追い詰められている。
厚生労働省の調査によれば17年の新卒平均初任給は大卒男性で207.8万円。大卒女性だと204.1万円。月割りにすればそれぞれ17万3166円と17万83円。もちろん額面だからそこから税や社会保障関連費用が差し引かれる。初年度はまだしも、前年度年収によってそれらの重圧が加わる2年目以降の手取りは16万円に満たないはずだ。黙っていてもベースアップがある時代ではない以上、給料が上がる想定で消費などできない。手に入れたが最後、ずっと馬鹿げたランニングコストを吸い取られるクルマを所有する気になどなるはずがない。
前述の通り、13年で170万円の税がかかるとすれば、それを月当たりに均等割すると1万円を超えてしまう。新車時にかかる部分も丸ごと均等割ではあるが、そもそもクルマの重量や排気量によって条件はいろいろと変わる。なのであくまでも目安として考えていただきたい。
1万円を超える税負担は純粋な保有コストであり、そのクルマを使って有料道路を走ったり給油したりすることも、高額すぎる駐車場代も保険料も含まれていない。若年層には保険料までもが罰則的な金額になるため、諸税と駐車場、保険料を合計すれば地価の安い地方ですら恐らく月額3万円くらいは必要になるだろう。こういう現実を前に「若者のクルマ離れ」などという言葉は空虚に過ぎる。若者の現実に寄り添えない制度の設計が傲岸不遜すぎるのだ。
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