ソーシャルレンディングの不正問題に出資者はどう対峙すべきか?“いま”が分かるビジネス塾(3/3 ページ)

» 2018年07月20日 06時30分 公開
[加谷珪一ITmedia]
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結局のところリスクは金利との引き換え

 銀行の場合、銀行法や独占禁止法などによって事業会社との兼業や事業会社への出資は制限されており、原則として融資先企業とのグループ関係は存在しない。だが、ソーシャルレンディングは、あくまで融資を行うファンドを運営しているだけであり、融資を受ける会社との資本関係の有無や人的関係については、当事者が積極的に開示しない限り知る方法はない。

 世の中には、金融機関によるガチガチの融資スキームにそぐわない案件も存在する。だからこそ、ソーシャルレンディングというプラットフォームに活動の余地がある。だが、ソーシャルレンディングは、柔軟な運用ができる反面、銀行が担保していたような完璧な透明性は期待できない。最悪の場合、お金を集める事業者とプラットフォームの事業者が結託する危険性もゼロではないだろう。

 融資というビジネスは、うまくマネジメントしないと、株式投資よりもさらに高いリスクを抱えてしまう。融資によって得られるのはわずか数%、多くても10%程度の利子だが、融資先の会社が破たんすれば、元本をすべて失う可能性がある。

 そのため銀行は、徹底的に担保価値にこだわり、貸付債権の保全に血眼になってきた。担保にしか着目しない銀行の姿勢は時に世間から批判されるが、そもそも論として「カネ貸し」というのはそこまでシビアにならなければ成立しないビジネスなのである。

 maneoに代表されるソーシャルレンディングにおいて高い金利が設定されているということは、こうしたリスクを引き受けた対価であるということを忘れてはならないだろう。

加谷珪一(かや けいいち/経済評論家)

 仙台市生まれ。東北大学工学部原子核工学科卒業後、日経BP社に記者として入社。

 野村證券グループの投資ファンド運用会社に転じ、企業評価や投資業務を担当。独立後は、中央省庁や政府系金融機関など対するコンサルティング業務に従事。現在は、経済、金融、ビジネス、ITなど多方面の分野で執筆活動を行っている。

 著書に「AI時代に生き残る企業、淘汰される企業」(宝島社)、「お金持ちはなぜ「教養」を必死に学ぶのか」(朝日新聞出版)、「お金持ちの教科書」(CCCメディアハウス)、「億万長者の情報整理術」(朝日新聞出版)などがある。


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