しかし、この数字では「急行電車と各駅停車」「ターミナルで出入り口に近い車両と遠い車両」などの混雑の差は分からない。どんぶり勘定の割り算だから、実態に即しているかどうかはアテにならない。
計算で求めた平均値だから「混雑率150%の路線のはずなのに、新聞を読むどころか、足が浮くくらい混んでいるじゃないか」となるわけだ。実態としては「各駅停車など人気のない列車は混雑率よりも快適」「急行電車など人気のある列車は混雑率より不快」である。混雑率はその程度の目安にはなる。ただし、実情の混み具合を観察するときに限れば「新聞が読めるようだな、150%くらいか」と目安になるだろう。その程度だ。
さて、小田急電鉄の混雑率に話を戻す。国交省の資料でも、小田急電鉄は複々線化完成前の輸送人員と輸送量をもとに混雑率を報告している。しかし「参考値」として、同じ輸送人員をもとに、複々線化後の輸送力を使って割り算をした数字を追加している。前年と同じ計算方法だと混雑率は194%で、実は前年度より悪い。ただし、3月の増発を反映すれば151%となる。
前年と同じ計算結果を求めるなら、今年の11月の平日の数字をもとに計算して、来年の発表を待たねばなるまい。ただし、小田急電鉄は複々線化をアピールして利用客を増やすもくろみもあったから、それが成功すれば輸送人員も増える。つまり、次の発表では151%より大きくなるはずだ。参考値はなんだかズルいし、そんな参考値を使ってプレスリリースを出してしまう国交省もどうかと思う。
ちなみに前年の同時期はプレスリリースを出していない。今年は「複々線化で混雑を解消できましたよ」とアピールしたかったのだろう。もっとも、前述のように混雑率自体が利用者から見た実態に合っていないから「印象操作か、おちゃめだな」という感想しかない。
小田急線の参考値。輸送人員は同じまま、輸送力のみ複々線化後の数字になっている。輸送力だけ比較すれば複々線化後に江ノ島線と多摩線は減少している。むしろ混雑がひどくなっているかもしれない(出典:国土交通省「最混雑区間における混雑率」)
東京圏主要区間「混雑率200%未満」のウソ
日本人が「通勤地獄」から抜け出せない、歴史的な背景
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小田急電鉄の「戦略的ダイヤ改正」を読み解くCopyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
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