アテンザの課題と進化池田直渡「週刊モータージャーナル」(3/5 ページ)

» 2018年07月30日 06時30分 公開
[池田直渡ITmedia]

 しかし、上下にプラットフォームを分離するというやり方はこれまで「一括企画」と「混流生産」を軸としてきたマツダの言い分と食い違う。マツダの全モデルを一括で企画し、全てのモデルを同一ラインで順不同で組み上げるという方針が変わったということだ。これを読み解く鍵はFRシャシーと言うことになるだろう。次世代のCX-5、CX-8、CX-9、アテンザの各車がFR化されるので企画から別くくりになるということだ。

18年の決算でマツダはアーキテクチャーの上下分割とトータル200万台のルートマップを示した 18年の決算でマツダはアーキテクチャーの上下分割とトータル200万台のルートマップを示した

 マツダでは、FFとFRを混流生産で組み上げる技術そのものはすでに確立している。実際マツダの本社工場のラインを見ると、ロードスターの次にデミオが、次にCX-5が、あるいはボンゴすらそれに続くという具合に、車種ごとに固めることなく、完全な順不同で流れている。しかし、生産手順が大きく異なるFFとFRを混流するのは当然手間がかかる。生産台数が限られたロードスターとボンゴだけなら全体効率に鑑みて止むなしだが、これを80万台規模でやろうということになれば、効率化の手法が変わってくる。

 先に挙げたリリースではアラバマ工場ではクロスオーバー系、つまりCXシリーズのみが生産されるような書かれ方になっているが、FR化される次期アテンザもここで生産されることになるのはほぼ間違いない。

 国内の既存工場でFFとFRをどう作り分けるのかはまだ発表されていないが、17年10月のリリースではすでに山口県の防府第1工場ではアクセラ、デミオ、CX-3を、防府第2工場ではアテンザとCX-5を生産するとアナウンスしており、上下分離の準備は徐々に進んでいると見て良いだろう。

 つまり、アテンザは商品ライフから言えばそろそろフルモデルチェンジしたいところだが、生産キャパシティのひっ迫と上下分離の体制確立の都合からいえばまだ引っ張りたい。18年中期の今、大幅な商品改良が行われたということは、少なくとも19年中のモデルチェンジはないだろう。そうなるとアラバマが稼働する21年まではあと一息ということにもなる。ただしそうなると12年にデビューしたアテンザを21年まで引っ張ることになる。それはそれで問題がある。もしかすると、国内では20年にデビューさせて、北米のローンチを21年まで引っ張るような折衷案も出てくるかもしれない。

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