東京オリンピックはもはや“国難”なのか 浮上する「サマータイム」国民生活への影響大(2/3 ページ)

» 2018年08月06日 15時45分 公開
[久我山徹ITmedia]

「太平洋戦争化」しつつある五輪

 国民生活への影響は既に決まっている。20年は、五輪開会式当日と閉会式翌日などを休日にする改正法が6月に成立。開会式(7月24日)の前後は4連休、閉会式の前後(8月9日)は3連休になるが、「海の日」(7月第3月曜)、「山の日」(8月11日)、「体育の日」(10月第2月曜)――の3祝日を移動させることで連休にする。

 都内の混雑緩和を図るためだが、東京五輪のためだけに日本全国で休日を移動してしまうことになる。20年10月は祝日がなくなるため、例年この時期に予定していたイベントや、宿泊客を見込んでいた各地の旅館などへの影響が出そうだ。

 混雑が慢性化する交通機関の対策では、東京都は朝の通勤ラッシュを分散させる「時差ビズ」やテレワークの導入促進を呼び掛ける。鉄道の混雑対策は乗客が時間をずらすしかない方法がないためだが、出勤時間をずらせない業種・職種では、期間中に何が起こるか分からず、対策が必要になるだろう。

 道路の渋滞対策の1つとして伝わったのが「五輪期間中はネット通販もできれば控えてほしい」という東京都五輪準備局の要望。弁護士ドットコムニュースがこれを報じると「『欲しがりません勝つまでは』ということか」とあきれる人が続出した。

 不足が懸念されるボランティア問題では、文部科学省とスポーツ庁が、大学などに対し五輪期間中の授業や試験の日程を柔軟に変更し、参加したい学生に配慮するよう求めた。学生を当て込んだ政府の思惑は、ネット上では「早くも学徒動員か」などと揶揄されている。東京ビッグサイトが使用不能になることで多数の見本市が開けなくなる問題も、事前のシミュレーションと利害調整を行政が怠った結果だ。

photo 東京ビッグサイトは五輪期間中にメディアセンターとして使用されるため、商談の場である見本市が開けなくなる問題が起きている

 こうしたさまざまな騒動が、敗戦で終わった第2次大戦中の理不尽と重なる人は多い。近現代史研究者の辻田真佐憲氏は、文春オンラインへの寄稿で「東京オリンピックはいよいよ『太平洋戦争化』しつつある」と述べ、戦時中に精神論がまん延した理由を「不可能な状況に無理やり適応しようとしたから」と指摘。「それゆえ、東京五輪に関するおかしな状況には異議を唱え続けなければならない」と述べている。

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