という背景で見ると、DSの悲願であるフランス製高級車の復権はなかなかの茨の道なのがお分かりいただけると思う。
今回デビューしたDS7クロスバックは、プジョー、シトロエン、DS、オペル、ボグスホールの各社を傘下に収めるグループPSAにとって、最上位ブランドであるDSのそのまたフラッグシップである。それをCセグメントのプラットフォームで仕立てなければならないところにDSの苦衷はある。考えてもみてほしい。レクサスLSをカローラのプラットフォームで作らざるを得ない状況なのだ。
ハイエンドブランドのフラッグシップとはいえ、走りそのものの洗練度でSクラスをはじめとするLセグ各車をぶちのめせるかどうかは最初から自明だ。だからDSはまずCセグのコンポーネンツを使いながら、全長4590mm、全幅1895mmと、ほぼDセグのレベルにサイズを拡大し、リソースを徹底的にデザインに振った。戦術としては恐らくそれ以外にやりようがない。
そして、それを見事にやり切っていると思う。商品性のキモそのものがデザインなのだから、品の良いシンプルなデザインなどとは言っていられない。それが徹底されているのはインテリアで、とにかくアクを強くして、個性的にする方向しかない。だからDSクロスバックのデザインは極めて手数が多い。見事だなと思うのは「うるさいデザイン」のギリギリの境界線で踏みとどまっていることだ。うるさいかうるさくないかで言えば十分うるさいが、辟易はさせない。
そしてそのデザインテイストがドイツでもイタリアでも日本でもない。どこかサイバーパンクな匂いのするサブカル的な仕立てで、これが新しいフランスなのだと言えるかぶき方になっていると思う。そういう意味ではドイツや日本のLセグメントのオーナーが眉間にしわを寄せて「ウォール・ストリート・ジャーナル」や「日本経済新聞」を読んでいそうな感じなのに対して、おっさんのクセにファッション誌を眺めていそうなイメージがある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PRアクセスランキング